ホンマでっか池田教授が、妻からの「人でなし」呼ばわりを受け入れた理由

 

料理の才能は、いくつかのことに同時に気を配るとともに、時間との戦いをうまく制する能力で、これは女房にはまるでかなわない。私が朝飯を作り始めた頃は、まず目玉焼きを作った。フライパンで作る目玉焼きは、低温でゆっくりと焼かないと、白身が焦げてしまう。白身が焦げないようにゆっくり焼きながら、黄身が半熟ぐらいになった頃が一番食べごろである。

しかし、朝飯と雖も、目玉焼きだけで済ますわけにはいかないので、目玉焼きをお皿にとってから、次に味噌汁を作る。鍋に水と粉末のだし(最近は「本枯節の無加塩だし」というのを使っている)を入れて火にかけて、冷凍しておいたナメコやシイタケ、時には生のニンジンやジャガイモを細かく切って放り込み、煮立ってきたら、庭から採ってきた菜っ葉を入れて、最後に味噌を溶かして、出来上がり、なんてことを悠長にやっていると、さっき作った目玉焼きはすっかり冷え切っている。両方とも温かいうちに食べるには、この二つを同時に作らなければならない。

朝飯を作るだけでもこれだけの知恵と手際が要る、という事は自分で作るまでは分からなかった。女房に作ってもらっていた時は、暖かい味噌汁と、温かい卵焼きと、温かいご飯が同時に出てくるのを不思議とも思わずに、ただ食べていただけだった。女房に人でなしと言われるのも無理はない。

自宅の庭の、猫の額ほどの(本当はもう少し広いよ)家庭菜園で、野菜を作っているので、庭から収穫した野菜を味噌汁に入れることが多い。早春まではコマツナが沢山採れたので、味噌汁の具は大概コマツナだった。今はキンジソウ(金時草)だ。この野菜はとても便利で、茎を切って葉っぱを取って、丸坊主の茎を土に挿しておけば、茎から根と葉が出てきて、いくらでも増える。冬は枯れてしまうが、わらでもかけておけば、完全に枯れることはなく、大抵は次の春になると、芽を出してくる。完全無農薬で手間もかからず、しかもお金も一切かからないという真に素晴らしい野菜である。

味噌は市販のものを使っていたが、今は自家製のものを使っている。大豆を茹でて潰し、冷めたら、大豆と麹と塩を均一に混ぜて団子にする。団子を容器に叩きつけながら詰めて、表面をならしてラップをかけ、ビニール袋に塩を適当に入れて重しとして表面に乗せ、そのまま放置し半年後に出来上がりである。これは私が一人で作るのではなく、女房と共同で作る。というよりも女房に指導してもらいながら作るわけだ。自分で作った味噌は市販のものより美味しい気がするのは、文字通り手前味噌だな。

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