ウソ吐きG7で東京五輪開会式への参加を促す、菅首相の「恥晒し」

 

ワクチン供給で競う?

朝日新聞6月13日付第2面の解説記事の見出しは「米主導G7、中ロと競る/ワクチン10億回提供」。まあ、よい意味で競い合って途上国に提供するのは結構なことではあるけれども、G7側には「欧米がワクチンの買い占めで批判」されてきたことへの後ろめたさに加えて、中国が80以上の途上国に輸出も含めて3億5,000万回分を提供、またロシアも自国製ワクチンがすでに世界の60カ国以上で承認を得るなど「存在感を強めてきた」ことへの焦りがある。

そのため「世界へのワクチン提供をめぐって、米国が5億回分の寄付を〔サミット前から〕いち早く表明。米国には、影響力を強める中国に代わって民主的で透明性のある選択肢を世界に示し、各国を『民主主義陣営』に取り込みたい思惑がある」(上掲朝日の解説)。

はっきり言って、余りに幼稚な「取った取られた」の陣取り合戦の発想だが、これに調子を合わせてさらに話を膨らませたのが議長のジョンソン英首相で、G7サミットの開会にあたって突如「途上国向けワクチンを10億回分提供」と言い出した。毎日新聞13日付報道によると、米国が表明した5億回分に他のサミット国で合わせて5億回分を上乗せしようという便乗構想のようだが、それにしても日本は(たぶん他国も)「事前に連絡がなく……困惑が広がっている」有様である。

こうなると、熱いトタン屋根の上の猫のようになってしまうのが日本の哀しさで、毎日の上掲記事が出している「G7各国のワクチン摂取を1回以上受けた人の割合」表によると(英オックスフォード大などのアワー・ワールド・イン・データの10日段階まとめ)、

カナダ  63.62%
英国   60.53
米国   51.56
ドイツ  47.19
イタリア 46.47
フランス 44.18
日本   12.60

これって、日本は「主要国」の中の味噌っ滓ということでしょう。と言うより、日本は途上国へのワクチン支援をする側ではなく、むしろしてもらいたい後進国の側だということである。にもかかわらず1カ月後には五輪大会を開催するので是非開会式に来て貰いたいと首脳たちに呼びかけるという、相手から見たら完全に支離滅裂な行動に出、そう言われたら「いや、私はちょっと…」と無碍にはできないから、「開会式には是非参加したい」くらいのお世辞は言うだろう。それを「成果」であるかに首相が誇り、外務官僚やマスコミがそれを称えているのが、この国がコーンウォールの地で晒している恥ずかしい姿である。

それでいて、先進国として振舞わなければならないから、ワクチン供給の国際的枠組みCOVAXに2億ドル+10億ドルの支出を表明、さらにこれから国内生産するワクチン3,000万回分も海外に提供するつもりであることも表明した。また、米国の対中国包囲網作戦に迎合するため、日本では公的接種に使わないアストラゼネカのワクチン124万回分を台湾に無償提供した。そのように、国内状況が苦しい中でも少しでも対外協力して頑張っているのに、打ち合わせもなしに「10億ドル」をぶつけられて「対応に苦慮している」(毎日)のである。

これも民主・専制に関係なく、WHOやCOVEXの枠組みで中国やロシアも含めてよく相談して、少しでも効率的に途上国にワクチンを行き渡らせていくかの大作戦を繰り広げなければならない問題であるというのに、なぜ「中国に対抗」するテーマになってしまうのか。

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