心理学者が解説。人間が左右されるのは「第一印象」か「最新の情報」か

 

【未開の学問】

「初頭効果」は、人が新たに出会った対象についての「印象」を形成する際に問題となります。

対象について、最初に得られた情報を基に「第一印象」が形成されるため、それに続いて得られた情報は、この第一印象に沿って解釈され、全体的な印象が形成されます。さらにその後、この全体的な印象と矛盾する情報が入ってきた場合、それは「認知的不協和(cognitive dissonance:認識の混乱)」を生じさせる「不快な」情報であるため、「抑圧」の対象となり、記憶されにくくなったり、忘れ去られたりすることになるのです。

こうした無意識領域での情報の処理によって、第一印象の堅牢さは守られ続けます。ですから、既に出来上がっている全体的な印象を変えるためには、相当な心理的エネルギーや情報量を必要とするのです。

これに対して「新近効果(終末効果)」が影響を発揮する状況というのは、アンダーソンの行ったディベートでの実験を見れば分かるように、沢山の情報が飛び交って、人がどのような「判断」をすべきか「迷っている」ような場面です。つまり、「新近効果」が問題となるのは、「判断」や「意思決定」においてなのです。

このように、具体的に対象としている心理的な現象が、「初頭効果」と「新近効果」では、全く違うのです。扱う現象が変われば、当てはまる法則も別のものになるのは当然と言えるでしょう。

このあたりに、心理学の厄介さがあります。よく言えば「発展途上」の学問ということになるのですが、全体的な統一的理論の欠如という点では、物理学や化学などの自然科学に大きく水を開けられたままと言えるでしょう。今から何十年も前の、フロイトやユングの理論体系が今もなお「有効性」を発揮しているのは、その後、より便利で魅力的な統一的理論体系が構築されることがなかったからに他なりません。

このように、心理学は、厄介な未開の学問です。しかし、その分、豊かで奇妙で、魅惑的な学問でもあると思うのは、贔屓(ひいき)の引き倒しというものでしょうか。

笑って読むうちに、いつの間にか心理学的な知恵もついてくる、富田隆さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

image by: Shutterstock.com

富田 隆この著者の記事一覧

テレビや雑誌でおなじみの心理学者・富田隆が、フランクにお届けする、お気楽な心理学講座です。かた苦しいアカデミック心理学とは一味違うぶっちゃけ話。笑って読むうちに、いつの間にか心理学的な知恵もついてくる、お得なメルマガです。読者の皆さんからの質問にも、どんどん答えていきます。横町のご隠居にでも相談する感覚で、お気軽にお声をおかけください。これは、あなたの人生を楽しく面白くするための心理学講座です。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 富田隆のお気楽心理学 』

【著者】 富田 隆 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 8日・18日・28日予定

print
いま読まれてます

  • 心理学者が解説。人間が左右されるのは「第一印象」か「最新の情報」か
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け