3.例えば『鬼滅の刃』をファッションに
例えば、『鬼滅の刃』を事例に考えてみよう。大正時代が舞台であり、大正ロマン、大正モダンという背景の中で、和洋折衷、人と鬼などが共存する不思議なバランスを持つ世界観となっている。
鬼のイメージには疫病のイメージがダブっているようだ。そして、鬼を退治する超能力を持った少年や少女たち。
こうした世界観や価値観をファッションに生かせないだろうか。といっても、鬼滅の刃のキャラクターをTシャツにプリントしたり、グリーンと黒の市松模様を使うという安易な方法ではない。あくまで、コンセプトや世界観を共有できないだろうか、という話である。
大正時代のグラフィックデザインは、アールヌーボーやアールデコの影響を強く受けている。服の形はともかく、大正モダンのアールヌーボーやアールデコのプリント生地を基本に考えてみる。
また、和洋折衷もキーワードだ。例えば、市松格子や青海波、麻の葉模様といった伝統柄をベースにリバティの花柄を重ねてみるのはどうか。
また、甘く装飾的なイメージの中に、鬼のイメージを重ねてみるのも面白いだろう。
デザインもきもののイメージを生かす。例えば、ラップドレスやラップスカート。ディティールはリボンや紐結び。
こうした条件のもとに、現代でも着られる服をデザインしてみる。
「何となく鬼滅の匂いがするね」という程度に感じてもらえれば良いのだ。
4.漫画とファッションの連携
世界観やコンセプトだけを取り入れるならば、直接的なライセンス契約は必要ない。むしろ、「デザイナーが漫画のファンで漫画の世界観を生かしたコレクションを作った」といえば、顧客にも伝わるし、漫画家や出版社も嫌な顔はしないだろう。
それでも、もし、漫画家とデザイナーが連携できれば様々な可能性が生れる。
例えば、漫画家とコラボして限定商品をプロデュースする。あるいは、漫画の中に着せる服をデザイナーがデザインする。あるいは、デザイナーのショップで漫画の原画展を行うなど。分野の異なるクリエイターが連携することで様々な可能性が生れるのである。
ビジネスの広がりも期待できるが、何よりも楽しいではないか。
漫画をコンセプトにすることで、世界市場に進出することもできるかもしれない。ファッションだけで世界に進出することは大変だが、もし、漫画と一緒に進出するのならば、その可能性も大きくなるだろう。
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