3.CADを基本とした外注パターン検定
高付加価値商品と量産品のプロトタイプをつくる技術はパターンメーキングと縫製に集約できるだろう。
パターンメーキングはパターンCADの登場で劇的に変わった。パターンデータをコピー、共有することで、チーフがマスターパターンを作成し、そのデータを元にアシスタントが展開パターンを作成できるようになったのだ。
もし、この手法を業界全体に応用するなら、基本となるパターンをクラウドに上げておいて、そこから展開することも可能だし、パターンナーが独自のパターンを販売することも可能になる。
また、パターンメーキングの教育も変わるだろう。これまでは、原型から各自の体型やサイズに合わせた製品パターンを作成することが中心だった。クセのある体型に合わせれば、クセのあるパターンになる。それは既製服にはならない。
既製服は、サイズ展開を前提にしている。標準サイズのバランスの良いパターンを作成し、グレーディングにより、一定のカバー率を確保するという考え方である。
標準サイズと言っても、国や民族、年齢、職業等により異なっている。それらの標準パターンをクラウドに上げておいて、そこからパターンを展開することができれば、より完成度の高いパターンを作れるのである。
企業からの外注パターンを作成する場合には、それぞれの企業のマスターパターンや標準パターンを基本に展開すべきである。しかし、大多数のアパレル企業は標準パターンを持っていない。企業内パターンナー個人のノウハウに依存しているからである。
外注パターンナーとは、独立したフリーランスのパターンナーである。外注パターンナーとして独立するために、必要なことは何だろう。
私は以下のものが必要だと考えている。パターンメーキングの基本的な技術、パターンCADの操作、アイテム毎に標準的なパターンを持っていることである。
標準的なパターンを持っていて、そこからCADでパターン展開することができれば、企業内でもアパレル市場でも通用するだろう。標準パターンがしっかりしていれば、着られない服、バランスの悪い服はできないはずだ。
標準パターンを配布し、展開操作を教えるための検定を整備したいと思う。そして、その運営主体となる法人を設立する。設立には、パターンCADメーカー、パターンメーキンク企業、ファッション専門学校、大学等と連携したい。
4.サンプル縫製の検定
次に各アイテムの標準パターンを元にした、サンプル縫製の検定を整備する。検定はアイテムごとに設定されるので、初級ブラウスとか、初級スカートというように、縫製の難易度とアイテムが組み合わされるので、実際に仕事を発注する側にとっても、目安になるはずである。
通常、量産の縫製工場は分業なので、一人の縫製工が一枚の服を最初から最後まで手がけることはない。一枚の服を全て縫製する「丸縫い」ができるのは、工場長やライン長など、高度な技術を持つ縫製工だけだ。
したがって、丸縫いができるサンプル縫製工は立派な技術者である。海外生産が増えても、国内でサンプルを縫製する仕事はなくならない。
また、サンプル縫製ができれば、自立してオーダーメイドの服を売ったり、一点ものを販売することも可能だ。
サンプル縫製の検定では、パターン、縫製仕様書、生地、付属等を提供し、実際に縫製し、最終検品まで行う。支給された、パターン、縫製仕様書、生地、付属等は、その後の資料としても活用できるはずだ。
こちらの検定は、自分で着用できる方が良いので、グレーディングパターンを用意して、選んでもらえるようにしたい。
縫製実習は多くのファッション専門学校で行っているので、学校に教材を支給して、審査を学校に委託することも可能だろう。
あるいは、縫製工場やミシンメーカーと連携したワークショップも可能だろう。
外注パターンナー、サンプル縫製という仕事は個人事業主として営業することが多いだろう。自分で伝票を切り、入出金管理も行わなければならない。こうしたことも検定として整備できればと思う。
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