これでは日本を守れない。深刻な自衛隊の人員不足、解決のヒントは中国にあり?

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政府が設置した大規模接種センターの運用全般、熱海の土石流災害への派遣など、この夏だけでも、国民の命を守るための活動に力を尽くす自衛隊。災害大国の日本ではいまやその働きを欠かすことは考えられず、危機管理の専門家でもある軍事アナリストの小川和久さんは、メルマガ『NEWSを疑え!』で、警察・消防と並び「究極のエッセンシャルワーカー」と位置づけました。そんな自衛隊の人員充足率は昨年3月時点で92%、長く100%に到達したことはありません。小川さんは中国が制定した「軍人地位・権益保障法」に触れ、日本にも打つ手はあるはずと訴えています。

究極のエッセンシャルワーカー

熱海の土石流災害から1ヵ月あまり、劣悪な環境のもとで行方不明者の捜索に当たっていた自衛隊の災害派遣部隊が撤収しました。自衛隊は警察、消防の部隊とともに、当初は胸まである泥流の中で、そのあとはコロナと熱射病に向き合いながら、想像を絶する作業を続けた訳です。

そこで、8月3日付の読売新聞に掲載された小さな記事を紹介したいと思います。

中国「軍人の待遇保障」法…人材確保へ 医療無料・子女に優先教育

 

「2日付の中国軍機関紙・解放軍報によると、中国で軍人の地位向上を図る目的で制定された『軍人地位・権益保障法』が1日、施行された。軍人の待遇改善を進め、軍人のなり手の確保につなげていくとともに、軍の士気向上を図る狙いがあるようだ。

 

同法は、『軍人が職責、使命を履行することを激励し、軍人を社会全体が尊崇する職業とし、国防や軍隊の現代化を促進する』とし、『軍人とその家族の生活水準を保障する』と明記した。

 

具体的には、環境の厳しい遠隔地で勤務する軍人の待遇を保障することや、軍人の住宅購入時の優遇、医療の無料提供、軍人の子女への教育を優先的に行うことなどを規定している。政府や報道機関にも、軍人の英雄的な事績を積極的に宣伝するよう求めている。

 

米国との対立を深める習近平《シージンピン》政権は、軍の現代化を進め、有能な人材の確保が課題となっている。中国では少子化が進み、若年層では危険を伴う軍務よりも民間企業を選ぶ傾向が強い。軍人の地位向上を法的に担保して人材確保につなげ、軍の士気を高めていく考えだとみられる」(8月3日付 読売新聞)

習近平体制の狙いはともかく、この中国の法律には国家社会の安全を維持し、その上に繁栄を実現していこうという基本的な姿勢が明確に示されています。

新型コロナウイルス感染症の蔓延にあって、我々はエッセンシャルワーカーという言葉を知りました。どんな状況にあっても危険を顧みず職務にあたり、社会活動を支える人びとのことです。医療従事者はもとより、行政、電力など重要インフラ、公共交通、流通、運輸、スーパーマーケット、コンビニなど、この人びとによって私たちの日々の営みは支えられています。

その中で、究極のエッセンシャルワーカーといえるのが自衛隊、警察、消防です。感染症の時ばかりでなく、あらゆる事態に備える必要があるからです。とりわけ自衛隊は災害や感染症ばかりでなく、戦争を抑止し、必要な場合には武力で国民を守るための訓練をたゆまず行っています。この自衛隊が盤石の態勢でないと、警察や消防の活動もままなりません。

自衛隊に断り切れないほどの応募者が殺到し、質量ともに必要なレベルを維持できる態勢を維持するためには、待遇の改善とそれを可能にするだけの防衛予算の増額は避けられません。政治家の皆さん、中国が進めている軍人の待遇改善が理にかなっていることを直視し、自衛隊についても手を打っていただきたいと思います。(小川和久)

image by:Hung Chung Chih / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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