消えた怪談番組。なぜ「お盆の風物詩」はTV放送されなくなったのか?

 

【ハートに火を点けて】

もちろん、怪談話やホラー映画などには、もっと純粋に「スリル」を楽しむという、感覚レベルの娯楽性もあります。

恐怖という感情は、攻撃性(怒り)や悲しみと同様に、それ自体はネガティブなものです。しかも、人は日常生活の中で、こうしたネガティブな感情を引き起こすような体験を、全て避けて通るというわけにはいきません。そして、そうした感情を貯め込むことは「フラストレーション(frustration 欲求不満)」の原因となり、放置すればストレス状態を引き起こしかねません。

そこで、代替的な疑似体験により、こうしたネガティブな感情の鬱積を吐き出す「カタルシス(Catharsis 浄化)」が必要となります。破壊の限りを尽くすような攻撃的な映画を見たり、悲恋の物語に涙したり、ホラー映画で悲鳴を上げるといった体験は、まさにこの「カタルシス」なのです。こうした体験を経た後、「スッキリした」気分になるのは、心の中に澱(おり)のように溜まっていたネガティブな感情をきれいに排出した証拠です。それは、純粋に「気持ちの良い」快楽体験なのです。

どんなに恐ろしいホラー映画でも、映画が終わり、劇場を出て明るい日常に戻れば、それらは一場の夢、スリルも過去のものとなり、既に「克服された恐怖体験」へと変容します。それはちょうど、たとえ夢で恐怖にうなされたとしても、醒めてしまえば、それは結局、「夢で良かった」と安心できるポジティブな体験に変わることとよく似ています。

さらに、こうしたカタルシス的な快感に加えて、恐怖は、もっと根源的な快楽を刺激するものでもあります。

そもそも、脳における恐怖、攻撃、性的興奮の中枢は隣接しており、相互に影響を与え合います。ですから、恐怖により引き起こされた興奮は、容易に性的中枢の興奮にすり替えられるわけです。攻撃性でも同様の影響が生じます。

以前に、デート中に絶叫マシンに乗ることやスポーツ観戦などが、男女の性欲を刺激するというお話をしました。これらは、それぞれ恐怖による興奮や攻撃性を解放したことによる興奮が性中枢に伝わり、性的な興奮が引き起こされるということの例です。

さらに大人の貴方なら、SM的なプレイが性欲を高める仕組みについても、同様のメカニズムで説明できることをお分かりいただけるでしょう。

安全な状況で体験される「恐怖」は快楽に火を点けます。

笑って読むうちに、いつの間にか心理学的な知恵もついてくる、富田隆さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 消えた怪談番組。なぜ「お盆の風物詩」はTV放送されなくなったのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け