トヨタの大野耐一さんは、利益についてこんなことを言っています。
「製造業の利益は、原価(コスト)を低減してこそ得られものである。われわれの製品は自由競争市場において、冷徹なる消費者の目によって選別されている。自由競争市場で生き残るためには、原価(コスト)の低減こそ至上命令なのである」
こんなことも言われています。
「産業人の意識革命が必要であろう。いつも相当量在庫をかかえていないと不安でしようがない気持ちが、つくり過ぎのムダをもたらし不良在庫という最大の経営ロスを生み出す元凶になったのである。この事態をまず深く認識することこそ、意識革命に通じるものと私は思うのです。」
ムダについて以下のようなものがあるとされます。
1.つくり過ぎのムダ
2.手持ちのムダ
3.運搬のムダ
4.加工そのもののムダ
5.在庫のムダ
6.動作のムダ
7.不良をつくるムダ
トヨタの生産方式の2本柱は「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」なのですが、これらにより上記の“ムダ取り”を実現して行きます。
張富士夫さんは、大野耐一さんのこんなエピソードを紹介しています。
「大野さんから指示を受けたある課長が、即座に『できません』と言ったところ、大野さんから烈火のごとく怒られたということです。理由は、指示に対して『ノー』を言ったことではもちろんありません。その課長が自分の部下を信じていなかったことにあります」
「大野さんの怒りは『お前(課長)には多くの部下がいる。人間は真剣になれば、どれくらい知恵が出るかわからん。部下の知恵を引き出させもせず、できませんとはなにごとか』というものでした。トヨタ生産方式は『人間の“知恵”の上に自働化とジャストインタイムの2本の柱が立っている」となるのだそうです。