コロナ禍にスシロー「過去最高益」の謎。スゴ腕“異色経営者”が打ち出す革命の全貌

 

タイの若者も大興奮~新業態「おにぎり」の寿司?

今年5月13日、水留は事業戦略発表会の席で、持ち株会社の社名を、スシローグローバルホールディングスから「FOOD&LIFE COMPANIES」という横文字に変更することを発表した。これにより一気に海外戦略を加速するという。

「当社はずっと『スシロー』の看板を社名にも背負ってきましたが、フード全体を見通してビジネスを展開しようという思いで、変更しました」(水留)

タイの首都バンコク。3月31日、スシローのタイ1号店がオープンした。就任6年、積極的に海外を攻める水留、すでに5つの国や地域に進出したが、これからその数を増やしていくという。一気に世界展開のアクセルを踏んだのだ。

攻めの姿勢は国内でも。大阪・吹田市の「FOOD&LIFE COMPANIES」本社でこの日、新商品の試食会が開かれていた。水留が試食していたのは、持ち帰り寿司チェーンを展開する「京樽」のちらし寿司だった。実は、水留はこの4月に京樽の買収も行っていた。

「いい刺激を受けています。今まで我々の中で埋没していた問題点が浮き彫りになってきたので、改善のスピードを上げて取り組んでいる最中です」(「京樽」石井憲社長)

寿司ブランドをいくつもそろえることで、相乗効果を図るという。

「グループでいい食材をしっかり調達して、それをアレンジして特色を生かして提供するのは各ブランドが考えること。そこは期待しているし、やらなければいけないことだと思っています」(水留)

一方、大阪市の南海なんば駅の駅構内にも新たな店を出した。一見、おにぎりにも見える寿司の新業態「むすび寿司」。さまざまな場所でもっと気軽に寿司を楽しめるようにと考え出した、新しい提案だ。

攻め続ける、スシローの進化は止まらない。

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※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

確かに、スシローではなく「FOOD&LIFE COMPANIES」の経営者と話しているのだと思った。ただし、水留さんは寿司に詳しかった。ハマチの皮引きに板前さんが少し失敗したのを、見逃さなかった。寿司の世界に入って6年、たぶん勉強したのだろう。プロの経営者とは、という質問には「プロでない経営者などいない」と、ごく当然のことだという風に答えた。すべてが論理的で、でも優しさも感じた。その優しさが寿司に生きている、そう思った。 

<出演者略歴>

水留浩一(みずとめ・こういち)1968年、神奈川県生まれ。1991年、東京大学理学部卒業後、電通入社。2009年、企業再生支援機構常務取締役就任。2010年、日本航空取締役副社長就任。2015年、あきんどスシロー代表取締役社長就任。

 (2021年6月3日にテレビ東京系列で放送した「カンブリア宮殿」を基に構成)

 

テレビ東京「カンブリア宮殿」

テレビ東京「カンブリア宮殿」

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