労働生産性の上がらぬ日本で「最低賃金」を上げる厚労省の愚策

 

<失業者数でいえば…>

厚労省の公表しているコロナ禍での失業者の増加数は、実態よりもかなり低い数字を公表していて、あてになりません。雇用保険に加入していない非正規労働者が統計に反映されていないからです。また、失業した後に再就職活動を止めてしまった(諦めてしまった)、いわゆる非労働力化した人も、失業者にはカウントされません。総務省の労働力調査などから見えてくる就業者数や雇用者数の変化からは、厚労省の公表数の数倍の人たちが職を失ったと考えられます。そして、その多くが、非正規で最低賃金額近辺の賃金で働いている労働者と思われます。

最低賃金の引き上げは、解雇規制の緩和や中途採用者のための労働市場の活性化とセットでなければなりません。そうでなければ、日本経済の浮揚につながらないでしょう。労働生産性の上昇がないまま最低賃金が引き上げられれば、結局は、採用抑制や正社員等の賃金引き下げによらなければ、最低賃金引き上げの原資が捻出できません。最近の政府や厚労省が行う事って、全体的な視点が欠け、目先の対応が増えている気がしてなりません。

結局のところ、いくら私がいろいろ言ったところで、10月からの最低賃金引き上げは決定事項であり覆りません。最低賃金法違反は労働基準監督署の取り締まりの対象ですし、最低賃金法違反には罰則もあります。そうなると、最低賃金引き上げに従わざるを得ません。個人的には、このコロナ禍で、政府、そして厚労省はよくもまあイケシャアシャアと、最低賃金引き上げなどと言えたもんだと呆れますが、それでも、今から1ヶ月ちょっとしかない短期間で、何とか引き上げに対応していくしかありません。

image by: soraneko / Shutterstock.com

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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