安倍・麻生というゾンビに取り憑かれた自民党・岸田新政権の前途多難

 

それにしても露骨すぎるゾンビの跋扈

さて、岸田文雄にとっては、同じ勝つにしても別の勝ち方があったはずで、それは宏池会本来の穏健保守リベラルにしっかりと立ち戻って組み立て直した説得的な政策体系を柱に、そこへ向かって岸田派だけでなく谷垣グループ、変節者=麻生とその取り巻きを除く麻生派の大半など「大宏池会」勢力を結集し、同会にとっての宿敵である清和会の保守タカ派路線、その鬼っ子としての安倍・高市的な戦前回帰的な保守反動路線と対決しつつ、河野チームとは違って路線・政策面から「党風を一新」する道筋を示して戦うことだったろう。

しかし、現実の岸田が採ったのは、安倍・麻生に決して逆らわず、彼らの了解と支持を得て権力の座に手を届かせようとする擦り寄り路線でしかなかった。宏池会の看板を引き継ぐ者が清和会と安倍に媚びてしまっては、すでにしてアイデンティティは崩壊していて、そうなると何としても権力を操作する側にいたい3A=ゾンビ3人組に足元を見透かされ、好きなようにいじくり回されてしまうという悲劇的な事態に陥る。

9月30日の党役員人事と一部閣僚の内定がまさにそれで、これほど酷い人事というのも滅多にお目にかからないと思うほどである。今更繰り返すまでもないが……

▼ゾンビNo.2の麻生を、森友問題で真面目な末端職員を自殺に追い込んだ財務省の高級官僚らが説明責任を回避するのを擁護し続けてきた人物だというのに、副総裁に据え

▼それで9年ぶりに空くことになる財務相には、あくまで麻生に忖度したのだろう、義弟=鈴木俊一を当て

▼ゾンビNo.3の甘利明を、あろうことか党の最高ポストで金も握る幹事長に置いた。16年に建設会社から都市再生機構への口利きを頼まれ自らも秘書も現金を受け取っておきながら経済再生担当相を辞任することで説明責任から逃れた男である

▼安倍お気に入りの超タカ派=高市早苗を政調会長に遇した

福田達夫の総務会長は清新ではあるが、3回生に党内の古狸どもを取り纏めて何事も“満場一致”で党議を決定しなければならないこのポストに押し込むのは無茶というもので、彼が潰される結果にならないよう祈りたい。これは福田が「党風一新の会」を引き連れて河野・小泉側に走らなかったことの論功行賞ポストが他になかったためで、どうもジグソーパズルがうまく行っていない。

ここまでの経緯で、すでに「岸田政権」の失敗は始まっていると言える。総選挙まで約1カ月、看板の架け替えによる心理的効果が続いているのか、それとも、このゾンビ傀儡性が早々と露呈して失望が始まっているのかで、選挙結果は大きく異なり、従って政権の行方も今は予測の限りではないが、私の予感ではどうもこの政権は出発の時から無理を重ねていて、余り長く続かないように思えてならない。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年10月4日号より一部抜粋・文中敬称略)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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