21日、WAONとnanacoが「Apple Pay」に対応することになりましたが、その前途は多難のようです。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、セブン-イレブンが過去に失敗した「セブンペイ」の件などを回想しながら、「nanaco」と「PayPay」の共存、「WAON」と「イオンペイ」との共存について言及したそれぞれの企業側からの見解を引き、今回の「Apple Pay」がもたらすユーザーとの接点に関するデメリットを指摘しています。
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WAONとnanacoがApple Payに対応。顧客接点失う恐れも
10月21日よりWAONとnanacoがApple Payに対応した。
2016年にApple Payが日本に上陸した際は「Suica」、「iD」、「QUICPay」が中心であったが、その後、PASMOやVISAも対応。ここにきて、日本でおサイフケータイ初期からサービスを提供していたWAONとnanacoも使えるようになった。
特にセブン&アイ・ホールディングスは2年前に「7pay」を開始するも、不正アクセスが大量に発生。その後の記者会見での対応が不味かったことからサービス廃止にまで追い込まれた。
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セブン&アイ・ホールディングスとしては2年前まで7payを中心とした投資を行っていたが、軌道修正を余儀なくされた。今回、ApplePayに対応できたことで、スマートフォン向けのマーケティングを改めて強化できるようになるようだ。
ただ、セブン-イレブンアプリを見ると画面の下に「PayPay」のアイコンが鎮座している。7payで失敗したあと、セブン-イレブンアプリにPayPayを載せるという苦渋の選択をしたのであった。ソフトバンク側とすれば法人案件としての成功事例になった。
今回、iPhoneでnanacoが使えるようになったことで、PayPayのアイコンは排除されることになるのか。セブン・カードサービスの水落辰也社長は「お客様の利便性を考慮し、現状、提供している他の決済手段を即排除するというようなことは一切行う予定はない。しかし、我々のnanacoは、グループの中心的な共通決済サービスであり、サービス性をより高めることによって、1人でも多くのお客様に加入、利用いただくという方向性で進めていきたい」とした。
一方、WAONを提供するイオンは、クレジットカードに加えてQRコード決済の「イオンペイ」を提供中だ。これらの決済サービスの棲み分けについて、イオンリテールの山元環樹WAON推進部長は「WAONは少額決済に強く、特に食料品の決済比率が高い。手持ちの現金をチャージできるのでクレジットカードとは違う価値がある。キャッシュレス決済でありながら、手元の現金のように管理できる。イオンペイはクレジットカードのスマホ決済であり、財布を出さなくていい利便性は一緒だが、棲み分けはできるのではないか」と語った。
ユーザーからすれば、レジ前でわざわざアプリを起動する必要のないWAONやnanacoの方が利便性は遙かに高い。ようやくApple Payで使えるようになったことで、WAONやnanacoのユーザーがさらに増えるのではないか。
一方で、セブン-イレブンやイオンなど顧客接点を求める側とすれば、Apple Payになってしまうとアプリを起動しなくなるので、クーポンやキャンペーンをユーザーに告知しにくくなるというデメリットも浮き彫りになる。
QRコード決済は顧客接点という点においては優秀だっただけに、Apple Payを使いつつ、どのようにユーザーにキャンペーンやクーポンをに認知させるかが、これからの課題となってきそうだ。
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image by: Usacheva Ekaterina / Shutterstock.com