“脱炭素祭り”で日本を袋叩きにするEU「石炭と原発依存」の不都合な真実

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10月31日、イギリス北部のグラスゴーで開幕した気候変動問題と対策を協議するCOP26。日本は前回に続き、温暖化対策に消極的とされる国に贈られる「化石賞」を受賞したことが大きく報じられていますが、我が国の環境に対する取り組みは世界から酷評を受けるレベルのものなのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官で、かつてはCOP会合での交渉プロセスにも参加した経験を持つ島田久仁彦さんが、「脱炭素祭り」とでも呼ぶべき近年の世界のトレンドに対して恐怖さえ感じるとの心情を吐露。さらに日本企業が進める脱炭素化・低炭素化に向けた努力を紹介するとともに、環境保全を叫ぶ主張の裏側にも、経済的な利益の拡大や地政学的な覇権獲得への意図が隠されている事実を忘れるべきではないとの見解を記しています。

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気候変動交渉と脱炭素祭り─Too lateは本当なのか?

今年もまたこの季節がやってきました。今回で26回目(6bis会合を入れると27回目)となる気候変動問題のCOP会合。本来は昨年の同時期に開催されることになりましたが、世界を襲ったコロナのパンデミックにより、1年間延長され、10月31日から開催されています。

私自身、COP3(1997)以降、COP22までは毎年、様々な立場で参加してきましたが、以降は気候変動問題にかかわる国際委員会の議長を務めたり、理事として参加したりするものの、交渉プロセスには参加していません。

パリ協定が合意された2015年12月のCOP21、そして異例の速さで条約としての発効を迎え、COP22以降、交渉の中心が「合意内容の交渉」から「各国における具体的な実施方法」に移ったのを機に交渉の一線から退いています。

COP26のニュースが流れるたびに、一抹の寂しさは感じているのですが、その報道内容を見るたびに、実は大きな違和感を抱いているのも確かです。

それはなぜでしょうか?

グティエレス国連事務総長の発言を引用すると、「COP26での失敗は、人類の終焉を意味する」とのことですが、“失敗”とは具体的にどのような状況を意味しているのでしょうか?

そして、“人類の終焉”とはどのような状況でしょうか?核保有国による同時核兵器使用でもない限り、human and biodiversity extinctionは今日明日に起きることではないはずです。

また途上国と言われる各国の首脳によるエモーショナルな演説の数々も、虚しい政治的パフォーマンスに過ぎず、「それで、あなた自身は何をするの?」、「じゃあどうするの?」という問いには全く答えていない状況にも矛盾を感じてしまいます。

また、それに呼応するかのように“現状を悲観視し、先進国による化石燃料の使用を糾弾する”NGOの意見も、理解できるところはあるのですが、自らがこの会議に参加するにあたって思い切り化石燃料を消費して飛んできた事実に対してはどのように答えるのでしょうか?

このような根本的な疑問は、おそらく答えられることのないものになるでしょうが、その中でも気候変動対策に向けての資金額の問題と、脱炭素祭りとでも呼ぶことが出来る世界みんな回れ右で同じ方向に妄信的に進もうとする姿を外からみて、恐怖さえ感じています。

パリ協定の実施に話題が移ったのを機に、国際的な議論が一気に脱炭素・カーボンニュートラルに移行しました。その中で、化石燃料の使用を悪とし、再生可能エネルギーへの移行を加速させるというトレンドができたことで、実社会の現実とそぐわない理想主義的な機運が席巻していると感じています。

特に石炭火力発電に対する風当たりは非常に強く、SDGs/ESGのコンセプトが金融業界に導入されるとほぼ時を同じくして、石炭火力を推し進める企業に対するファンドからの要請が相次ぎ、要請に従わない場合は投資を引き上げる(disinvestment)ケースが増加しました。

世界最大の政府系ファンドであるノルウェーの年金基金による大規模なポートフォリオ見直しの動きと投資の引き揚げに端を発して、企業は挙って、脱石炭の流れを作らざるを得ない状況に陥りました。

そして、イメージ戦略という側面もあり、再生可能エネルギーへのシフトと投資拡大、そして化石燃料関連プロジェクトからの投資引き揚げや新規投資停止という動きに出ます。

その背後では、環境系NGOがシェアホルダーとしての株主提案を世界で繰り広げ、どんどんエネルギー系企業を追い込んでいくという流れが最近のトレンドです。

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