“脱炭素祭り”で日本を袋叩きにするEU「石炭と原発依存」の不都合な真実

 

では日本はどうでしょうか?

京都議定書第2約束期間への参加拒否に始まり、その後、先進国・途上国の別なく、いろいろなポイントに対して非難を浴びてきました。その端的な例は、先述の石炭火力発電所の利用と開発、そしてアジア各国への輸入方針でしょう。

2011年の福島第一原発事故以降、当時の中長期エネルギー見通しでは、電源の半分を占めることになっていた原発が事実上停止し、その発電の穴を埋めるために、再拡大したのが石炭火力発電、そして石油に代わって“石炭や石油よりもCO2排出が少ない”とされる液化天然ガスを用いた火力発電所が活躍せざるを得ないという現状に直面しています。

日本政府も企業も、だからといって再生可能エネルギーへのシフトを怠っているかと言えば、決してそんなことはなく、国土地理的に限界がある中、再生可能エネルギーのエネルギーミックスに占める割合を増加させようと必死です。FITという無謀な策もその一つだったと思えますし、その後、導入するFIP制度もおそらく負担を積み上げる結果になるでしょう。

そのような背景の下、日本の企業は石炭火力発電においても、技術力を通じて低炭素化を進めており、欧米諸国や環境NGOが糾弾するような内容とは世界が違っています。そして、GHG排出がより少ないとされるLNG(液化天然ガス)を用いた火力発電や、船舶の燃料も重油からLNGに転換して、より排出量を減少させるという取り組みも行い、さらにはアンモニアや水素と、石炭・LNGの混焼による発電や動力源の確保という、脱炭素化・低炭素化に向けた努力は常に続けています。

しかし、メディアが取り上げるNGOや若者の声はどうでしょうか?総じて「日本はもっと努力すべき」、「世界の潮流に逆らうなんて恥だ」という内容が多いように思われます。

でも、産業界が行う必死の努力が、そう非難する人たちの日々の生活を豊かにするベースになっていることを考えたことはないのか?と聞きたくなります。

まあ、これ以上書くと、ただの愚痴になってしまうので、このあたりで止めておきますが、今回、岸田総理が表明した追加資金支援は、日本が世界最高の技術とノウハウを誇り、アジア各国からまだまだ必要とされている火力発電部門の脱炭素化に向けた努力に向けられることになっています。いうなれば、より現状に即したソリューションの提案と言えるのではないでしょうか?

そのような中、今回のCOP26において評価でき、かつ楽しみな国際的な取り組みが合意されました。

それはGlobal Methane Initiativeというもので、米欧が主導して提案した内容であり、各国2020年比で2030年までの間にメタン排出を3割減少させるという取り組みですが、すでに日本を含め、90か国ほどが参加への意思を表明しています。

メタンは、ご存じの通り、噂の二酸化炭素(CO2)に比べて、温暖化効果が21倍あり、かつ削減が比較的短期的に行えると考えられているため、国際的な排出削減を大幅に行うためには手っ取り早い(low hanging fruits)手段だと言えますが、「どのセクターのメタン排出をターゲット化するか」については、各国の意図は違います。

欧米は、石油と天然ガス部門からのメタンの漏れ(リーケージ)が主な問題となっており(長距離をパイプラインで輸送するため)、メタン削減のターゲットは自らこのセクターになりますが、日本のように、炭素資源をほぼ輸入に頼り、かつ厳重に貯蔵することから、あまり漏れを検出することがない経済にしてみると、「どうやったらさらに削減が出来るのか?」という疑問が湧くかと思います。

他には埋立地からのメタン漏れというのが欧米では問題視されていますが、日本は一旦回収後、超高温で焼却処理されており、その灰を埋め立てに用いるため、ここでもメタン排出はほぼゼロとカウントされています。

日本のメタン排出の大部分は、水田(米作)と牛のゲップで、その割合は全体の8割を占めます。そのため、日本が行うメタン排出30%削減は、主にこの農業セクターからの排出を抑えるというように捉えられるかと思います。ゲップの出ない牛のえさの開発などは、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチンなどの酪農国からも重宝されています。

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