「分配、分配」が招く日本の貧困化。岸田政権に見えぬ“育成策”

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先の衆院選では自民党単独で絶対安定多数を確保し、順調な船出を迎えたとも言える第2次岸田内閣。しかし経済財政面に関しては難しい舵取りを強いられる可能性も高いようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、岸田政権の経済対策について、分配ばかりが目立ち産業育成策やインフレ対策が見えないと批判。さらにこのまま進めば日本は確実に衰退する、との厳しい見解を記しています。

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岸田政権にインフレ対策はないのか?

日本は給付金を十分に国民に実施しなかったことで、株価は上昇していないが、今の状態の方が米国のバブリーな株高に比べて、正常であろうと思う。

しかし、コロナが収まった来年1月に18歳未満の子供に付き1人10万円が支給される。これは、遅いし、困っているときでもない。なにかが変である。この10万円は貯蓄に回るだけでなので、半分をクーポンにするという。また、困窮家庭や学生にも10万円給付するという。

そのほかに、介護士、看護師、保育士などの給与を上げるというが、これは良いことであるが、利用者の料金を上げないで行うと、これも一種の給付金である。

今困っているのは観光業関係者であり、早くGoToトラベルを始める必要があるのに、来年2月以降と当初言っていたが、クレームがきたのか来年1月になった。困っている国民の声を反映するのが遅い。

今、コロナが下火になっているときに、観光業界に観光客を増やして、売上金を入れないと、来年中期に再度コロナが再流行したら、観光業界全体が倒産してしまう事態が起こりえる。観光業を政府は潰すことになる。

産業政策として、中小企業への250万円の支援金はあるが、これも産業育成策ではない。給付金の一種であろう。1つだけ、コロナ飲み薬の開発支援が盛り込まれたが、外国企業分の可能性もあり、国内企業への支援でない可能性がある。

ということで、給付優先で産業育成政策がなにもない40兆円の補正予算になってしまったようだ。

今まであった、国土強靭化、脱炭素での資源再利用、再生可能エネルギー、半導体の国内企業育成などの言葉が見えないことになっている。

これでは、政策期待の手がかりを失い株価上昇も起きないことになり、新興市場は活気がなくなっている。

それより、日本のインフレ対策はどうするのかが見えない。原油価格は上昇するし、日銀が量的緩和継続という限りは、円安に振れることになり、輸入物価の上昇で、一層のインフレ懸念は大きい。

世界の中央銀行と同様に、日銀もテーパリングを公表する方向で、政策を転換する必要になっているはずだ。そうすると、今までのような財政支出の膨張もできないことになる。もし、財政支出の縮小をしないと、金利上昇になり、国債費の膨張になる。

MMTでもインフレが起きたら、財政支出の縮小が必要としているので、その理論を信じた人たちも、財政拡大から財政縮小方向での主張変更が必要であるが、そのように見えない。

財政縮小の時期に来ているのに、給付金を配る日本は、世界の方向と逆行しているように見える。これでよいのでしょうかね。

財政縮小でも増税でも、日本国民は確実に貧困化することになる。今までの金融緩和と財政赤字垂れ流しの上に、製造業育成政策なしの付けを払う時期に来たようである。産業政策なしでは、日本は確実に衰退する。

しかし、円安になるということが悪いことだけではない。日本を再度、輸出立国にするために必要なことでもある。輸出競争に勝つためにウォン安に韓国は為替介入しているが、日本は長年の量的金融緩和で通貨膨張が起き円安になるので、為替操作ではなく米国も文句が言えない。

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