そのような中で、気候変動問題やエネルギー問題といった最低限協力できそうなエリアで協議が進んだのは、もしかしたら評価できるかもしれません。実効性は、いつもながら分かりませんが。
今後、核問題や安全保障、経済・貿易問題などで実務者間での協議の場が設置されることが決まりましたが、もし、気候変動問題や、通商問題、軍縮などで、互いに誠実に交渉できるような場になれば、両国間の偶発的な衝突のリスクを軽減できるかもしれません。
特に、軍縮や核不拡散の問題は、両国にとって頭の痛い(そして日本にとっても頭痛の種である)北朝鮮の核兵器・ミサイル開発問題に対応するためにも相互に利益があると思われ、また連携が比較的に可能なエリアだと考えられます。
そのような状況下で、アメリカとの同盟関係を外交の基軸とし、アメリカを唯一の同盟国としつつ、中国とも経済・安全保障上のチャンネルを持つ日本は、どのような役割を果たすべきでしょうか。
1つは、アメリカとの同盟関係を堅持しつつ、中国との対話を進め、米中間の調整役としての立ち位置でしょう。
日本経済を見てみても、アメリカも重要なパートナーですが、中国との通商抜きではすでに成り立たない構造になっており、レアメタルなども中国に依存することから、中国との友好な関係維持は必要な条件となります。
歴史問題や尖閣諸島問題など、対立点は存在しますが、現時点では日中間はしっかりとコミュニケーションは取れていると思われますので、それを維持・強化して、アメリカと中国を繋ぐ役割を果たすべきでしょう。
そうすることで、米中間の直接的な緊張がぎりぎりまで高まった場合でも、まだ最後の望みとして、仲介の任を負うことが出来る立ち位置を作ることが出来ます。
2つ目は、アメリカやアジア諸国と連携し、中国が建設的な政策決定を行うように促す環境づくりの核としての役割です。
中国が危機感を抱く台湾のTSMCの工場誘致は、中国政府からすると「日本もアメリカと同じく、台湾に舵を切り、中国に圧力をかける」と取りかねないぎりぎりの線と思われますが、「これはあくまでも経済的な理由であり、安定的な半導体の供給確保のために、生産体制の強化を支援するに過ぎず、政治的な意図はない」といったメッセージを、中国に発しておく必要があるでしょう。
また、中国への対抗という色をできるだけ薄めつつ、東南アジア諸国との協力を深め、共に栄えるアジアを構築するために協力し、そのために中国とも協力するという姿勢を打ち出すことも有効だと考えます。
米中対立の緊張緩和がなかなか進まない中、偶発的な衝突から、だれも望まない米中戦争に発展することがないように、国際的な、そして地域における協調を高める必要があるでしょう。
対中包囲網で、直接的にアジアに関係がないはずの欧州各国がまた出しゃばってきている傾向には、若干の違和感と懸念を抱きますが、伸び行く中国の発展を、アジア地域全体で享受し、共有できるような体制づくりを志向する方向に進むことを個人的には望みます。そして、その軸として日本が官民ともに活躍してくれれば…。私はそう願ってやみません。
皆さんはどうお考えになるでしょうか?
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