中露海軍が「津軽海峡」航行の衝撃。日本は“鬼門”の防衛力を強化せよ

2021.11.20
 

日本は米中露対立の最前線になるか?

今後、日本は米中露の軍事対立の最前線になる可能性が高い。多くのメディア報道を見ても分かるとおり、日本を巡る軍事・安全保障は離島防衛や尖閣諸島、台湾や南シナ海などその大半が南西諸島以南だ。よって、我々の注目も必然的にそこに集まってしまうが、今後も北東方面も強く意識する必要がある。

その理由は、中国の日本海への進出、もっといえば北極シーレーン開拓にある。習政権は近年、北極白書を公刊するなど第3の一帯一路とも呼ばれる“氷上のシルクロード”の建設に力を注いでいる。北極海には世界で未発見の石油の13パーセント、天然ガスの30パーセントが海底に眠っているとされ、資源を巡る国家間競争が激しくなる中、北極海は主要国の大きな注目を集めている。しかし、中国と北極海を結ぶルートは、東シナ海から対馬海峡、宗谷海峡からオホーツク海、津軽海峡から太平洋、そしてベーリング海を通ることになり、日本海は中国にとっての重要航路となる。そういった大きな経済的可能性が秘めているとなれば、習政権としても軍事的なプレゼンスを示すことで北極経済シーレーンを強化することは想像に難くない。近年、温暖化により北極の海氷面積が最小を度々記録するなど、その下に眠る資源へのアクセスは現実味を帯びてきている。中国にとって、日本海から以北の海域は重要性が増してきている。

ロシアも中国の北極進出には懸念を抱いていないわけではないが、まずは太平洋が米国や欧州などに有利な環境にならないよう、中国との協力などあらゆる政策を取ってくることだろう。日本周辺を巡る一帯は、今後米中露の安全保障対立の最前線と化す可能性がある。日本は南西方面だけでなく、北東方面にも力を注ぐ必要がある。

image by: yurisuslov / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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