北の核は防げない。日本が今すぐ見直すべき「専守防衛」という自縄自縛

 

北朝鮮は9月11、12日に低高度で1,500キロ・メートル飛行が可能な、米軍の「トマホーク」に酷似した長距離巡行ミサイルを、9月15日には貨物列車を改造した発射台を使用した変則的な軌道で飛行したミサイルを発射。9月28日には、弾頭部の誘導機能などを確認したと主張する音速の5倍以上の速さで飛ぶ極超音速「火星8」を発射。10月19日に発射した弾道ミサイルは新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)であったと。翌20日付の朝鮮中央通信は、兵器を開発する国防科学院が試射に成功したと伝えた。

この新型SLBMは下降時に急上昇する特性を持つ、「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれる短距離弾道ミサイルに酷似すると分析されている。同ミサイルの飛行距離は600~700キロ・メートル程度で韓国や日本の米軍基地を射程に収め、変則的な軌道を飛ぶために迎撃が難しいとされる。

発射に使われた潜水艦は、2016年8月にSLBMを発射したコレ級潜水艦(排水量約1,500トン)とみられる。旧ソ連の技術をベースにした旧式で、ミサイルを1発だけ搭載できる。

朝鮮中央通信は発射実験を「海軍の水中作戦能力向上に大きく寄与する」と評価したが、潜水艦の能力を踏まえると長距離の作戦には不向きとの評価もあるものの、隠密性の高い潜水艦から発射するSLBMは、敵の核攻撃に対する反撃能力を示すことにつながり、相手に先制攻撃をためらわせる抑止力となる。

北朝鮮がこのように多様なミサイルの開発に力を注いでいるのはなぜか。共通するのは「奇襲能力」の向上を図っている点だ。「複数のミサイルを多様な手段で同時多発的に撃たれた場合は脅威」となる。

このように多様化する北朝鮮のミサイルに、日本のミサイル防衛のシステムでは、探知は難しいと言われている。「相手が撃つ前に先手を」という先制的自衛権の発動も選択肢として持つ必要があるならば、そのためには、相手のミサイルの正確な位置を事前につかんでおかなければならない。しかし、北朝鮮側は、衛星や電波傍受には用心しており、いざとなれば、監視網に引っかからないように行動することが求められることは当然のことである。

敵基地攻撃論もさることながら、問題はそれ以前に、「専守防衛」問題である。専守防衛は、戦後の防衛政策の背骨のようなもので、「日本の抑止力を妨げる弊害をもたらしてきた」と言われている。今こそ、北朝鮮や中国、それにロシアからの軍事的脅威を前に、日本政府と日本人は真摯に専守防衛について論議すべき時が来ている。前統合幕僚長の河野克俊氏は、某日刊紙で「『国家の品格』落とす専守防衛」と喝破していたが、卓見である。

最後に、かつて毛沢東が「たとえズボンをはかなくても核を持つ」と檄を飛ばしたことがあるが、核に固執する金正恩(キム・ジョンウン)政権が、いつ日本に核ミサイルを飛ばしてくるかもしれない脅威にある。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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