報告書『量子時代の中国の脅威』衝撃中身。日本政府と企業は今すぐ行動を

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各国、各企業で開発競争が繰り広げられている量子コンピュータは、その実用化と同時に現在使用されている暗号化データを無力化する可能性があるようです。来るべきその時に向けて、「中国の脅威」が高まるとする報告書が注目を集めていると伝えるのは、軍事アナリストの小川和久さんが主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の共著者である静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授の西恭之さん。量子コンピュータが実用化される2030年代でも価値がありそうなデータを収集するために、中国による不正アクセスが増える可能性が指摘されているなど、国家や企業はデータとインフラを守るために今から行動する必要があるとの警告について詳しく解説しています。

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報告書『量子時代の中国の脅威』の衝撃

米国のコンサルタント会社ブーズ・アレン・ハミルトンはこのほど、量子コンピュータ時代のセキュリティには今から取り組む必要があるとの報告書を公表、注目を集めている。実用化はまだ先とはいえ、量子コンピュータは潜在的に新たなサイバー脅威となっており、企業などの最高情報セキュリティ責任者(CISO)は、データとインフラを守るため今から行動する必要があるという趣旨だ。

報告書の題名は『量子時代の中国の脅威』。量子コンピュータ開発の先頭集団にいる中国が、実用化されれば直ちに解読できるように、米国などの暗号化データの収集を近いうちに始めると予測している。同社の脅威インテリジェンス、サイバーセキュリティ・リスク管理、量子情報科学の専門家の知見を集めてレポートされている。

量子コンピュータは2020年代のうちに、ある種のシステムのモデリング能力で在来型コンピュータを上回り、医薬品や高性能材料の開発を加速するようになるという予測が一般的だ。

報告書『量子時代の中国の脅威』によると、そうした量子シミュレーションに入力するデータが、中国の経済スパイの標的になっていくという。中国の量子コンピュータは、おそらく2030年代まで既存の暗号化データを解読できないと思われるが、「インテリジェンスとしての寿命の長い暗号化データ」を、解読が可能になるまで所持する目的で行う不正アクセスが増えるおそれがあるという。この種のデータには、生体認証情報、秘密の情報源の身元情報、国民識別番号、兵器の設計などが含まれる。

ブーズ・アレン・ハミルトンの戦略サイバー脅威インテリジェンス責任者のネイト・ビーチ=ウェストモーランド氏は、IT政策ニュースサイト「ネクスト・ガヴ」の取材に対し、「10年以内に量子コンピュータの脅威を受ける組織は少ないかもしれないが、ポスト量子暗号(量子コンピュータでも解読できない暗号)など重要な対策も10年以上かかるので、今から戦略を策定して資源を割り当てなければならない」と指摘している。

報告書はCISOに対し、1)敵にとっての自組織の資産の価値を、量子コンピュータがどのように変えるのかという脅威モデリングを行い、2)ポスト量子暗号化の実施戦略を策定し、3)戦略的奇襲を防ぐため、内部の人員に量子コンピュータについて教育し、新たな動向について継続的に教えること、を提言している。

さらに、ビーチ=ウェストモーランド氏は、この対策を官庁や企業で推進し、米国の経済的利益と安全保障上の利益を守るため、米政府の関与を求めている。(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)

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  • 2021/11/22 『NEWSを疑え!』第1007号(2021年11月22日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・F-35Bの地中海墜落で英米が回収を急ぐ理由
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・台湾有事、米報告書の読み方(小川和久)

  • 2021/11/18 『NEWSを疑え!』第1006号(2021年11月18日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆明治7年、日本は台湾に出兵した
 ◆日本資本主義の父・渋沢栄一
 ◆きっかけは漂流民大量殺害事件
 ◆台湾出兵で明治の日本が得たもの
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・インドは「2070年CO2排出実質ゼロ」を達成する
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・意味不明な松野官房長官の核先制不使用への反対論(西恭之)
◎編集後記
 ・頑張れ、宇宙作戦隊!

  • 2021/11/15 『NEWSを疑え!』第1005号(2021年11月15日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・進む米国の極超音速滑空兵器対策
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・上陸適地を忘れた台湾有事論(小川和久)

  • 2021/11/11 『NEWSを疑え!』第1004号(2021年11月11日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆千葉県警に女性本部長誕生!日本警察のいま
 ◆能力も人柄も素晴らしい田中俊恵警視監
 ◆犯罪の国際化に対応できているか
 ◆テロ・サイバーに大きな課題
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・移民・難民を使うベラルーシのハイブリッド戦
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・台湾侵攻に100万人が必要な理由(西恭之)
◎編集後記
 ・海洋国家の自覚なしに海洋権益は守れない

  • 2021/11/08 『NEWSを疑え!』第1003号(2021年11月8日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米国防総省は中国が核燃料サイクルを軍事転用すると想定
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・政治家の発言でわかる防衛省・自衛隊のレベル(小川和久)

  • 2021/11/04 『NEWSを疑え!』第1002号(2021年11月4日号)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆アフガン退避失敗!!海外安全問題を考える
 ◆〝決心〟できなかった日本政府
 ◆またも飛ばなかった政府のビジネスジェット
 ◆中国はリビアで4万人以上を逃がした
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・説得力に欠ける米政府のコロナ起源報告書
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・米空母は中国との差を維持できるか(西恭之)
◎編集後記
 ・台湾有事への米海軍の見積もりは疑問

  • 2021/11/01 『NEWSを疑え!』第1001号(2021年11月1日特別号)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米空軍AWACS後継機はE-7か?
(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・セッティング・ナショナル・プライオリティーズ(小川和久)

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2021年10月配信分
  • 『NEWSを疑え!』第1000号(2021年10月28日号)(10/28)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆国会にも欲しい米議会のスタッフ機能
 ◆個人スタッフは下院十数人・上院30人以上
 ◆〝回転ドア〟が生み出すダイナミズム
 ◆GAOに代表される強力な補助機関
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・トランプが米情報機関との戦いに敗れた
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・スウェーデンの要衝で米軍が共同訓練(西恭之)
◎編集後記
 ・危険だからアフガンから退避するのに…

  • 『NEWSを疑え!』第999号(2021年10月25日特別号)(10/25)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・米陸軍が無人戦闘車と部隊対抗訓練
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・官邸に戻るのが最悪の場合もある(小川和久)

  • 『NEWSを疑え!』第998号(2021年10月21日号)(10/21)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆台湾有事のリアリティ
 ◆中国には上陸作戦能力が決定的に不足
 ◆致命的な軍事インフラの立ち後れ
 ◆中国が仕掛けるハイブリッド戦
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・食料・農業がランサムウェアに狙われている
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・パウエル・ドクトリンの光と陰(西恭之)
◎編集後記
 ・極超音速滑空体は軍縮交渉のテーマになる?

  • 『NEWSを疑え!』第997号(2021年10月18日特別号)(10/18)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・南側の死角から米国を攻撃する中国の新ミサイル
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・エース記者は影響力を自覚せよ(小川和久)

  • 『NEWSを疑え!』第996号(2021年10月14日号)(10/14)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆知っていますか、アレクサンドロス大王
 ◆アフガニスタン侵攻は前330年
 ◆10年の遠征で巨大帝国を建設
 ◆ペルシアの公道が東征を可能に
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・提出された「台湾侵攻防止法案」は不要?
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・米司令官による中国空軍力の過大見積もり(西恭之)
◎編集後記
 ・金門・馬祖への砲撃の教訓

  • 『NEWSを疑え!』第995号(2021年10月11日特別号)(10/11)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・虎の子のシーウルフ級原潜が南シナ海で水中衝突
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・「台湾有事」で空騒ぎするなかれ(小川和久)

  • 『NEWSを疑え!』第994号(2021年10月7日号)(10/7)

◎ストラテジック・アイ(Strategic Eye)
 ◇◆日本の離島防衛とフォークランドの教訓
 ◆それは民間人の上陸から始まった
 ◆垂直離着陸機ハリアーの活躍
 ◆尖閣諸島ではF-35Bを投入
◎セキュリティ・アイ(Security Eye)
 ・この冬、世界の石油・ガス供給が逼迫する
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎ミリタリー・アイ(Military Eye)
 ・豪州の原潜調達は英国製が有力(西恭之)
◎編集後記
 ・暴力の連鎖を断つということ

  • 『NEWSを疑え!』第993号(2021年10月4日特別号)(10/4)

◎テクノ・アイ(Techno Eye)
 ・ハバナ症候群で意図的にミスリードした米メディア
 (静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
◎編集後記
 ・プレゼンに出る「戦えない自衛隊」 (小川和久)

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image by:Boykov / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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