新潟のドン「裏金2~3千万撒け」で露呈した自民党“金権選挙”のウラ実態

 

一方、元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は、泉田氏の姿勢に批判的だ。12月2日のフジテレビ系『めざまし8』で、自分の経験をもとにこう解説した。

「国会議員と地方議員、必ずもめる。国会議員が当選するのに、地方議員が一生懸命活動をするのに、国会議員は当選すると地方議員への敬意を忘れちゃう」
「国会議員はすごくお金がくる。それを独り占めしているなら当然地方議員から文句は出る」

橋下氏は2008年の大阪府知事選に出馬するさい、自民党に寄付を求められ、1,000万円を振り込んだという。泉田氏が提供した200万円は少なすぎるということか。

そのためだろうか、10月8日の泉田選挙事務所開所式では、地元議員の不満が噴出した。挨拶に立った宮崎悦男県議のこの発言。

「私も泉田先生にかなり厳しい言葉を言うことは多々ある。もっと地域を歩いてくれよ。現場主義を貫いてくれよ」。

泉田氏との間の深い溝を感じさせる。

泉田氏は新潟県知事を3期つとめ、2016年の知事選にも四選をめざして出馬すると思われたが、県財政の悪化を背景に、地元紙の批判キャンペーンに見舞われ、出馬断念に追い込まれた。地元紙の背後に「原子力ムラ」の存在が見え隠れした。

泉田知事は福島第一原発事故のあと、東京電力の杜撰な防災対策を批判し、一貫して柏崎刈羽原発の再稼働に抵抗する姿勢を示し続けていた。

しかし、その泉田氏も、「寄らば大樹の陰」の呪縛から逃れられる人ではなかった。2017年9月の衆院選。民進党が擁立する動きを見せていたが、星野氏と当時の二階俊博幹事長を頼って自民党から出馬し、当選した。

もとをただせば、通産省の官僚だった泉田氏が岐阜県庁に出向していた時期、たまたま星野氏の目に留まって、新潟県知事選に担ぎ出されたのが政界入りのきっかけだ。素人に選挙の手ほどきをしてくれた星野氏は、いわば恩人であり、恩師である。

だが、日本的なムラ社会と協調せず、霞が関や永田町で変人扱いされ、地元との関係強化に熱心ではない泉田氏に対し、星野氏ら地元議員らの不満はたまっていった。

県議や市議に影響力のある大ボスは、その集票力を武器に、知事や国会議員を擁立し、当選させる。その力に頼らなければ選挙に勝てないことを肌身で感じる知事や国会議員は、大ボスの言いなりになるものだ。ところが、「変人」の誉れ高い泉田氏の場合は、そううまくいかなかったというわけだ。

どうやら、自民党の国政選挙において、地方議員はタダでは動いてくれないらしい。「候補者たるもの、各支部にカネを入れるのは当たり前」というのが常識のようなのである。

しかし、そんな相場観が根っこにあったからこそ、参選広島の大規模買収事件のようなことが起こったのではないだろうか。

そもそも、カネで地方議員を動かし、票を集めようという了見が間違いのもとだ。そんなことだから、全国どこの選挙も疑われる。先の衆院選で、苦戦を伝えられていた自民党が土壇場で戦況をひっくり返したことについても、金力が働いたのではないかと怪しまれる。根本的に選挙運動のやり方を変えたらどうか。

河井事件を踏まえた中国新聞社の調査によると、広島県内の地方議員の9割が国会議員からの寄付金を「必要ない」と、きわめて真っ当な回答をしている。人間、痛い目にあわなければ分からないということだろうか。

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image by: Twitter(@泉田裕彦

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