では、アメリカとその同盟国の政策立案者たちは、中国への戦略的なデータの流れを制限すべきでしょうか。今のところ、バイデン政権の答えは「たぶん」です。
今年の夏、米国のジェイク・サリバン国家安全保障顧問は、「戦略的な競争相手(中国)は、ビッグデータを戦略的な資産と見なしており、我々も同じように見なければならない」と述べました。
データ問題に関する米国の外交官や通商交渉官の活動は、米国の大手ハイテク企業のプライバシー規則をめぐる欧州の国々との激しい争いが中心となっています。北京からのはるかに大きな脅威には、ほとんど対処できていないのが現状です。
良いニュースは、もし民主主義国家が行動を共にすれば、明らかなパラノイア(不安妄想)によって自らの進歩を複雑にしている中国よりも有利な立場に立てるかもしれないということです。
習近平はここ数カ月、アリババやテンセントといった中国の大手ハイテク企業を取り締まり、データを国が管理する第三者に提供することを強要しています。この取り締まりによって1兆円以上の市場価値が失われました。またこれらの企業の革新性は低下するでしょう。
賢明な政策は、バイデン政権が6月に発表した大統領令を強力に実施することです。そのためには、医療記録や携帯電話のアプリなどを通じて、大量の米国の機密データが中国に流れる仕組みを阻止する必要があります。これらはすべて現在、基本的に規制されていません。
また同盟国は、中国への流出を制限しつつ、自国内でのデータ共有を促進するために協力しなければなりません。日本の安倍晋三元首相は、ある青写真を発表しました。これは、「Data Free Flow With Trust」と呼ばれるもので、同盟国の政策とすべきものです。
ワシントンとその同盟国が強力な反応を示さなければ、習近平氏は将来のグローバルパワーの高みに立つことに成功するでしょう。
【解説】
中国は民主主義国の自由なデータ流通にアクセスがあるのに対して、逆がないのは不公平だという記事です。
しかし問題はそれだけではないです。
米国が自国のGAFAらの企業を警戒しているように、中国もアリババやテンセントを警戒しています。彼らの情報収集力は国を超えているからです。
そこに激烈な米中対立が加わるのですから、問題は複雑になります。
いずれにせよ、国にとっても企業にとってもデータ(情報)こそが最大の武器であることは間違いありません。日本はハードウエアの開発には強みがありますが、情報収集や分析については相当に弱い印象があります。そもそも情報はタダと軽視する認識さえあります。
それが国家や企業の致命傷にならないことを願います。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月12日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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