2022年も注目の「NFT」。業界人が決して口にしない根本的な疑念

 

筆者は、「何らかの事象が起こったことを、その当事者が世の中に知らせたいと思っており、かつ、世界がその事を知る必要があるケース以外では、ブロックチェーンは不要」と指摘します。

つまり、「世の中に一つしかなく、かつ、多くの人が価値を認めるデジタル・アートの所有者が移動したこと」を記録する媒体としてはブロックチェーンは良い媒体で、ブロックチェーンの最初のキラーアプリケーションとして、デジタル・アートのNFTが立ち上がったのは必然とも言えるのです。

逆に、いわゆる「ユーティリティ・トークン」と呼ばれる、NFTを「コンサートのチケット」や「貸部屋の鍵」として使うアプローチはメリットのわりにコストが高すぎることを示します。つまり、「ユーティリティ・トークンは(もっと効率の良い)通常のデータベースの上に構築すべき」なのです。

さらに筆者は、現在のスマートコントラクトは未熟で欠点だらけであり、かつ、一度スタートしたブロックチェーンは、大量の電力を消費しながら未来永劫動き続けるという前提が根本的に間違っている、と指摘します。

ブロックチェーン支持者は、ブロックチェーン上に記録されたデータは、通常のデータベース上のデータと違って、データベースの所有者の経営方針次第で消去されたり変更される可能性がない分、民主的で安全と主張しますが、それは、そのブロックチェーンが未来永劫、コミュニティによって維持されることを前提としている主張でしかないのです。

ブロックチェーンの技術やその周りのアプリケーションが進化するにつれ、今もてはやされているBitcoinやEthereumの魅力が大幅に薄れ、マイニングをする人たちが大幅に減った結果、残った一部のマイナーたちに好き勝手にされてしまう未来も十分に考えられることを忘れてはいけないのです。

つまり「ブロックチェーンは民主的に運営されているから安心・安全」という考え方は、根本的に間違っていると筆者は指摘しているのです。

この記事には、これ以外にも、ブロックチェーンやNFTに関わるさまざまな言説を、エンジニアの視点から、的確に否定したり解説してくれています。これまで私が読んだブロックチェーン関連の文章の中では、もっとも「信頼出来る」文章だと言えます。

世界の未来を予測するエンジニア・中島聡さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

image by: Shutterstock.com

中島聡この著者の記事一覧

マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 週刊 Life is beautiful 』

【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 2022年も注目の「NFT」。業界人が決して口にしない根本的な疑念
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け