スポーツ指導の現場で「罰」を求める保護者たち。どう対応すべき?

 

それでもあきらめず、「学歴や偏差値に関わらず、これさえ習慣化すればきっと役立つ」という具体的な手法など、ひたすら熱く語り続けておりました。

しかし、半分ぐらいの学生は寝ているか、スマホかPCで何か別のことをやっています。さすがにおしゃべりは他の学生の邪魔になるので怒って退出させるなどの罰を与えたこともありますが、さほど効果はありません。

「続ければきっといいことがある」という裏付けとして、私の成功体験なども交えつつ話すと、愚息の意見ではイマドキの若者には「何それ?自慢に見える」とのこと。社会人基礎力協議会代表理事で、私より大学教員経験の長い拓殖大学商学部・長尾素子教授のご意見では「久米さんのように成功したロールモデルを見ても、イマドキの学生は『あれは別の人。あの人だからできた』と冷めてしまう」そうです。

まさに「暖簾に腕押し」。「熱い人ほどウザい」と敬遠されてしまい。がんばればがんばるほど逆効果になる感覚なのです。

一番衝撃的だったのは、iUでは同大学で最重要の必修科目を教えているにも関わらず、しかもレポートさえ出せば単位を出すと言っているのに、提出してくれない学生が2割ほどいることです。私にも大学生の息子がいますので、高い学費を払っている親御さんの気持ちになってしまうと胸が痛くなります。この必修科目の単位を落とすと、進級できず、インターンにも行けないので、結構な「罰」が与えられるはずなのですが、効き目が無いのです。

そこで、今年から始めたことも含め、ここ数年の試行錯誤の結果、ちょっとだけ成果が出ている指導法をお話いたしましょう。

1.私の話は短く済ます。詳細な方法よりヒントだけを伝える

いくら企業経営者や団体のリーダーには役立つ話であろうが、長く話されるのは、もともとヒトの意見を聞いて試す習慣がなく、すぐ眠くなってしまう人には、逆に迷惑な話です。

そこで、私は、具体的なやり方を、事細かく教えるのはやめにして、これからやってもらう課題の説明と、ちょっとしたヒントだけ伝えることにしました。

より具体的なテクニックなどは、課題を学生が発表する時に、その作品を見ながら個別に教えるようにしたのです。そうすると、テクニック等を私が講義形式で一方的に話すよりも、耳を傾けてくれる ようです。

2.学生たちが制作→発表→評価をする時間に振り分ける

私が熱く語る時間を、学生たちが何かをする時間にシフトしました。事前の宿題や事後のレポートを課題にしても、やってくれない学生が多いので、授業時間内で課題制作、発表、評価をしてもらうようにしたのです。

経営者なら「教えない分だけカネを返せ」とクレームするところですが、授業中に時間を与えても課題をやってくれない学生がいるので仕方ありません。

そして、私のお手本披露は最小限にして、なるべく多くの学生に自分の作品を発表してもらいます。上手な学生、いつも課題をすばやく学生に偏らないように、まんべんなく発表してもらうようにしています。

3.私が褒めるだけではなく、クラス全体で褒め合う

イマドキの学生は自己肯定感が低くて自信がありません。人前で自分の意見を言うのも苦手です。でもそれは、オトナや仲間に褒められた経験が、あまりに少ないのだと気づきました。

おじいちゃん子、おばあちゃん子なおかつ、下町コミュニティ育ちで、小さい頃から、あらゆるオトナたちから実力と関係なく褒められてきた私とは大違い(例えば太っているのに体格がいいねえと褒められて自信を持つような)。

ヒトには時として、こうした根拠のない自信が必要なのですが、その大切さを私は今まで理解していませんでした。そこで、どんな作品であれ私は褒めて褒めて褒めまくります。

同時に、学生たちにも発表者へのレビューを書いてもらいます。そこでの注意点は「Yes But法」で、まずは褒めてからアドバイスすること。

これにより、発表者は教員からだけでなく、クラスの仲間から褒められ、認められていると感じることができる のです。

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