4.みんな違って、みんないいことを伝える
私が担当している授業は、たった一つの答えを暗記して答えるものではありません。
- ゲスト講師の言葉で一番自分に刺さった一言を書く
- 多摩で一番おいしいラーメンの写真を撮って紹介する
- ある企業のサイトリニューアルの提案をする
といった課題を出すので、一人一人答えが違って当たり前なのです。
そこで、なるべく多種多様な発表をみんなの前でしてもらい、どの作品も良いところを探して褒めちぎります。すると学生もマネをして、どの作品にもいいところがあると気づき、積極的に褒めるようになるのです。
いわゆる日本的同調圧力の呪縛を解いてあげることが大切です。
5.発表者との問答で、具体的なアドバイスを伝える
発表を聴いて褒めてイイ気分になってくれたところで、ちょっとした問答をします。それは、本当なら書いてもよいのに、遠慮してなのか書いていない、作者の本心に関わることです。
「この夕陽の写真を撮った時に、どんな気持ちになった?」
「自作のクリームシチューは、どこを工夫しているの?」
「自分の強みに書いていったプログラムってどんなものを作ったの?」
こうして質問すると、緊張がほぐれて笑顔になり、時には自慢気に話をしてくれるのです。
その時の気持ちを、もっと具体的に書いてみようよ。そうすれば、もっと読んだ人に伝わるよ。
そこで興味を示したところで初めて、「写真はこんな風に撮ったらいいよ」「文章はこうしたらどうだろう」と、本来なら講義で伝えたいことを、ワンポイントでアドバイスするのです。
具体的な事例があった方がわかりやすいので、ひとつご紹介しましょう。
多摩大学で「多摩のおすすめ動物」を探してfacebookに投稿する課題を出しました。その結果、こんな投稿記事が集まりました。
【1点見つめの猿】
学生たちの人気投票で一番人気 だったのは、この「猿」の作品です。
「何枚ぐらい写真を撮った?」と聴くと「この1枚だけ」。
「もっとたくさん撮ろうよ」と言いたい気持ちを押さえて「1枚だけでこの写真を撮れるのはすごいね」と褒めながらアドバイスします。
「他の動物の中で、この猿が一番良かった?」と聴くと「この猿だけ見て帰った」との答え。
「せっかく動物園に行ったんだから、もっとイロイロな動物を見ようよ」とハッパをかけたいところですが、それもガマン。
「すごいな。猿山のこの猿に注目するなんて」「題名もコピーライターのセンスがあるね」と褒めるのです。
こうして毎回数名の発表が終わった時点で、学生たちに一番好きな作品を選んでコメントを書くという課題を出します。
それを私が集計して、次の週の授業で、もう一度、各作品を紹介しながら、ひとつひとつコメントを読み上げるのです。
多摩動物園の多くの動物のなかからあえて1匹の猿を選んでいて興味深かったからです。
題名が面白くてセンスを感じた。
この猿は何を見てるのか、何を考えてるのか色々想像できる写真で面白いなと思いました。
普通の人と違う文章で個性が出ていてい良い投稿だと思った。
渋い顔をした猿が見れば見るほどじわじわきて面白かった。
キャッチコピーのように、猿が1点見つめをしていて可愛いなと感じたからです。そして、多摩動物公園に久々に行った際に猿を見ていなかったので、投稿で見れてよかったです。
写真が綺麗で1点見つめをしているサルをとっていて面白いと思いました。
1枚しか撮っていないのにこの猿の写真を撮れたのがすごいと思った。
猿の佇まいに注目し、その気持ちまで考えていて面白いと思った。
写真を撮ったのが1回にも関わらずすごい写真でした。文章を見て行ってみたいとも思いました。
多摩動物園の多くの動物のなかからあえて1匹の猿を選んでいて興味深かったからです。
こうして、様々な角度から褒められれば、当人も悪い気持ちはしないでしょうし、自信を深めることもできましょう。そして、もっとよくするためのアドバイスにも耳を傾けやすくなります。