【対テロリスト】人質救出に自衛隊を派遣するという選択肢

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『週刊 Life is beautiful』2015年1月27日号

英国が身代金を払わない理由

英国が身代金を払わない理由は「テロ組織は身代金を資本として軍備を拡大し、新たなテロリストたちをリクルートして強大になって行くから」という話です。

この問題は、ゲーム理論における「囚人のジレンマ」とも似ており、国にとっての最適な戦略と、誘拐された人の家族にとっての最適な戦略が根本的に異なる点が難しくしています。

国(もしくは、テロに対抗する国々すべて)にとっての最適な戦略は、「多少の犠牲者が出ようと身代金は決して払わない」戦略です。身代金はテロリストたちの軍資金になるし、身代金が支払われる可能性があるからこそ誘拐事件が起こるからです。つまり、身代金を払うことが、さらなる誘拐事件を引き起こすことになるのです。

しかし、家族を誘拐されてしまった人たちにとっては、事情は全く異なります。家族を無事に連れ戻すためには、国には是非とも身代金を払って欲しいし、もし自分で払えるのであれば払うのが普通です。普段はどんなに「テロリストに身代金を払うべきではない」を主張している人でも、実際に自分の家族がテロリストに誘拐されたら、意見を変えます。

これが誘拐事件に対する対応がとても難しい一番の理由です。国には国民の利益を最優先にする責任がありますが、相反する「人質の家族にとっての利益」と「長い目で見た国民全体にとっての利益」とを天秤にかけなければならないからです。

「人質の家族にとっての利益」を優先して身代金を支払えばさらなる誘拐事件を引き起こすし、「国民全体にとっての利益」を優先して身代金を支払わずに人質が処刑されれば「国民を守ることのできない政府」のレッテルを貼られるだけです。

結局のところ、米国や英国のように「身代金の支払いには絶対に応じず、軍事力を使って人質を救出する」しか選択肢はないと私は思います。当然、その作戦が失敗すれば、人質だけでなく、派遣した自衛隊員の命をも失う可能性はありますが、それが国防というものです。

とても難しい問題ですが、この件に関しては、日本政府は人質救出のための自衛隊の海外派遣というのも選択肢の一つとして真剣に考えるべきだと私は思います。私は、憲法9条の改定にも集団的自衛権の容認にも反対ですが、人質救出のための海外での軍事行動は、自衛行為の一つとして認めるべきだ思います。

 

『週刊 Life is beautiful』2015年1月27日号

著者/中島聡
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。 NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
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