習近平「終身支配」に黄信号。政府と中国人民の間に吹き始めた“隙間風”

 

【核廃絶に対する新しいチャレンジの1年】

2022年1月4日に開幕予定だったNPT(核不拡散条約)の再検討会議は、世界各国で広がるコロナ・オミクロン株の感染拡大を受け、再度延長されることとなりました。

軍縮担当の国連事務次長である中満氏曰く、遅くとも8月までには開催されるとの見込みが示されていますが、今後のコロナの広がり次第では、8月も危ないかもしれません。

5年に一度開催されることになっているNPT再検討会議ですが、前回は2015年に開催され、合意一歩手前で中国などの反対を受けて合意が見送られた経緯があります。2020年に開催予定だった会議では、核不拡散体制に対する核保有国と非保有国の間での落としどころの模索と合意が期待されていました。

しかし、ご存じの通り、その会合もコロナのパンデミックを受けて4度にわたって延期され、核廃絶に向けたモメンタムが保てるかどうか、不安が募っています。

2015年での交渉決裂という現実を受けてNPTにおける核廃絶に向けた画期的な進捗が難しいと判断した非核保有国は、そのフラストレーションから一気に核兵器を禁止する条約(TPNW)を提案しました。TPNWは2017年7月7日に国連において多数決で採択し、2021年に発効させるに至りました。

しかし、核保有国(米ロ中仏英)と持っていると思われる国々、そしてアメリカの核の傘に守られる同盟国(日・韓・欧州各国)は「TPNWでは、現状の混迷する国際安全保障状況に十分に応えることはできない」との理由から反対・棄権する決定をしています。

核保有国と非保有国の思惑の間に大きな溝があることを実感する出来事となっています。

唯一の戦争被爆国である日本も、岸田総理の言葉を借りれば「核兵器の禁止はゴールとして目指すものの、そこに至るためのプロセスが明確に描かれていない現状では、真の核廃絶に向かうための材料がそろわない」との理由で参加していません。

核廃絶のためには、核兵器を使う理由・役割などもなくしていかない限り、核兵器の物理的な廃絶の準備ができていないのではないかというのが、岸田総理の理解のようです。

NPT再検討会議の開幕予定日だった1月4日に、国連安全保障理事会の常任理事国(P5)であり、“公式な”核保有国であるアメリカ・英国・中国・ロシア・フランスが連名で「核兵器の先制使用や戦争での使用を禁じる」との内容の声明を出しました。これについての評価は賛否両論ですが、核廃絶に向けた方向性では同じ方向を向いているという“総論”の部分で、核保有国が同じ方向を向いているというのはよい兆候だと考えます。

しかし、同時に、中国の担当局長は「アメリカがこれから30年の間にすべての核兵器のアップグレードを行おうとしている中、中国が国家安全保障上、自国の核戦力を高めることは当然」との“本音”も漏らしていますし、欧米と中ロがそれぞれに今回の共同声明の発案者は自分だと発表して、NPTのみならず、今後の核兵器関連の議論での主導権争いを行っているのは、正直、興ざめする部分でもあるでしょう。

そして、今回の声明がもう一つ響かないのは、公式には認められていない“他の保有国”の思惑が分からないことが原因かと思います。

そこにはイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮、(イラン)と並びますが、これらのNPT発足後に核兵器を保有したと信じられる国々は特に反応していません。北朝鮮については、年初の挨拶のように飛翔体を日本海に発射していますが、もしかしたらこれが5か国の共同宣言が空っぽであるとのイメージを表現し、嘲笑うようなものであるという意味合いも込めているのかなと、ちょっと勘繰ってみたくもなりますが。

私がちょっと懸念しているのが、これまで日本政府が長年、日本の役割と自任してきた【核保有国と非保有国の間を橋渡しする役割】をドイツが日本から奪うのではないかと思われることです。

ドイツのショルツ氏を首相としてできた連立政権の一つの看板が核廃絶なのですが、政権発足後すぐに3月に開催される核兵器禁止条約(TPNW)の第1回締約国会合にオブザーバー参加すると発表し、「NATOメンバーとしてアメリカの核の傘に守られている立場であるドイツが、核兵器禁止条約にオブザーバー参加することで、核保有国と非保有国との間の橋渡しをしたい」と述べました。

これまでの多部門でのドイツの外交戦略を見てみると、確実に国際舞台における主導権を握ろうという意図が見られ、“当事国”としてコアな会議に参加しようとするものです。

過去には、北朝鮮の核問題を話し合う会合(通称:ストックホルム会議)の当事国として北朝鮮問題の国際的な議論に関わっています。ちなみにこのストックホルム会議に、拉致問題を抱える日本は含まれていません(ストックホルム会議には何度か招待され、個人資格で参加していますが、そこに日本の声が反映されないのは非常に口惜しい限りです)。

私自身、昨年4月より、核兵器がない持続可能な未来づくりの音頭を取るHOPe(へいわ創造機構ひろしま)のプリンシパル・ディレクターを務めさせていただく身としては、ぜひ「核保有国と非核保有国との橋渡しを行い、核兵器のない未来づくりの主導権」を日本政府に取っていただくべく、しっかりとお手伝いしたいと思っております。

皆様のご協力・応援もよろしくお願いいたします。

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