習近平「終身支配」に黄信号。政府と中国人民の間に吹き始めた“隙間風”

 

【2022年も米中対立激化】

トランプ政権から、対中問題を引き継ぎ、それをさらに激化させたバイデン政権。気候変動問題やコロナ対策を中心に中国との融和を図ってみるものの、コロナ対策では結局、トランプ大統領と同じく中国への非難を激化させ、中国政府を激怒させ、対立をさらに深める結果になっています。

結果としてバイデン政権が選択したのは、対中包囲網の強化でした。軍事的安全保障では英国と豪州とともにAUKUSを結成し、経済安全保障では日米豪印の4か国を軸にクアッドを形成して、中国との対立姿勢を鮮明化させることになりました。そして、習近平体制にとっての核心的利益に位置付けられる台湾に、かつてないほどのコミットメントを行い、中国政府をアメリカとの対決に追いやっています。

そこに“国際社会への復帰”と“欧州との仲直り”という看板の下、バイデン政権は欧州各国を対中包囲網に引き込み、トランプ時代以上に、世界の2極化を進めているように見えます。

そして極めつけは、12月初めにオンライン開催した“民主主義サミット”で、中ロをはじめ、中東諸国や中南米の国々を招待リストから除外したことで、各地での反米感情が強化されています。

その隙に入り込み、覇権を拡大しようとしているのが中国ですが、果たして思惑通りにうまくいっているかと言えば、その結果は微妙と言わざるを得ません。

一帯一路政策や、イランとの戦略的パートナーシップ、そしてタリバンやミャンマー国軍との関係強化など、いろいろな手段を駆使して、自国陣営への取り込みを図っていますが、各国に根強く存在する中国への警戒感が邪魔しているようです。

その足踏み状態にうまく対応できないのが、またアメリカ政府なのです。

どうしてでしょうか?

その一因は、米中両国内に広がる内政問題の軋みです。

まず中国国内ですが、当初、コロナ対策に成功したと宣言し、いち早く経済活動を再開した中国ですが、ここにきて感染爆発が起きており、コロナ対応の失敗が国内で揶揄され始めているという状況があります。コロナ対策という名の下、国民に不自由を強いてきたことへの反発が顕在化してきているようです。

習近平国家主席の“指導”の下、推し進めてきた経済政策もここにきて成長率が低下するという事態に陥り、そのしわ寄せが、これまでの国際競争力強化を担ってきたIT業界への締め付けという形で出てきています。そしてITの寵児と言われるオンラインでの発信で財を成したニューリッチたちが次々と当局によって逮捕され、膨大な課徴金を支払わされるという事態が続出しており、それがまた中国企業および富裕層の心理をネガティブにしているようです。

そして、中国共産党幹部にとっては重要なOne China、そして台湾併合への夢は、実際は国民にはあまり響いておらず、台湾をめぐってアメリカおよび欧州各国との対立が深まっていることに対して、あまりよい感情を抱いておらず、このような対立状況を高め、かつ解決できない政府への反感が募っていると言われています。それらを強権的に抑えようとしている政府と人民との隙間風が顕在化しているようです。

来年の全人代で3期目の国家主席としての任期が得られるかが問われるこの大事な時期に、人民との間の隙間風はあまりよろしくない状況だと思われ、習近平国家主席とその周辺の焦りが見え、その表れが、【やっぱりアメリカに負けてはならない】というさらなる対立の表面化につながるという悪循環になっています。

つまり、国内情勢の不安定化が、アメリカとの対立を際立たせ、中国の強さを国民にアピールするという動きに導いているようです。

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