身の回りから「印刷されたモノ」が減っていく日々を過ごして考えたこと

 

この印刷機は欧州各地に広まり、世界史的な功績は人々の言論空間を創出したことだろう。市民に広がった言葉は、自らも言葉を発することを認め、その言葉はカトリックの権威に対抗することを意味した。ルターの改革は印刷した文書で世の中を覚醒させたということに尽きるかもしれない。

これは現代で言えば印刷技術はインターネットであろう。当時、カトリックという権威はソーシャルメディア台頭前の政府やマスメディアである。権威から遠いソーシャルメディアは市民の手にあり、その新たな言論空間は広がっている。

2010年のチュニジア、2011年のエジプトではソーシャルメディアにより市民革命が成立した。人々が手に持ったモバイル端末は言論空間として世界と市民をつなげたのである。権力者にとって市民がモノを言うのは都合が悪いことだろう。中国でインターネットをコントロールすることは重要な任務であり、北朝鮮で携帯電話を持つことは難しい。

中世の印刷技術からソーシャルメディアに変わった現代において、その利用はコミュニティ参加には必須であるが、その自由度の高さ故に気になるのが、私たちがそれを使う際のルールであり、それを使う際に他者を傷つけず、融和な姿勢で関わり続けるかの「倫理観」である。

印刷技術が広まった時に人々は何を思い、その技術を使ったかを考える時、昔も今も根本的には便利さで得る利益を優先するのは変わらないような気がする。だからこそ、メディア利用と倫理は常に一緒に意識しなければいけない問題なのだろう。

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image by:Vasin Lee/Shutterstock.com

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