認知症になった親族の口座は、子供でも引き出せないという現実

2022.02.24
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2025年には有病者数が約700万人と試算されるなど、もはや誰にとっても特別なものではなくなった認知症ですが、事前準備が後々の「面倒事」を遠ざけてくれるようです。今回、認知症発症後の資産を守る方法をレクチャーしてくださるのは、ファイナンシャルプランナーで『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』などの著書でも知られ、NEO企画代表として数々のベストセラーを手掛ける長尾義弘さん。長尾さんは「成年後見制度」「金銭信託」「家族信託」の3つについて詳しく紹介しています。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

せっかく貯めた「老後資金」が凍結されて使えない!

以前こんな話を聞いたことがあります。その人の父親は、とても用意周到な人で、老後の生活費に困らないように、それなりの「老後資金」をしっかりと貯めていました。しかも、自分がもし認知症や介護が必要になった時に備え、自分が入る有料老人ホームの施設を見学までしていたそうです。

ところが、父親が認知症になって、有料老人ホームに入る手続きをしようとしたときです。息子さんが老人ホームに入るための頭金を、父親の預金口座から引き出そうとしたのですが、断られてしまいました。なぜかというと本人が認知症になっているので、本人確認ができないからでした。

なんと認知症になると、本人が貯めたお金を本人のために使えない!?という事態になってしまうのです。

でも、これは誰にでもあり得る話なのです。今回は、それらの解決方法を考えたいと思います。

本人のために使うお金は引き出せるかも?

金融機関では、本人の確認ができない場合、たとえ親族であってもお金は引き出せません。ですので、認知症になると銀行口座は凍結されるのです。

いまや、高齢者の5人に1人は認知症を発症すると言われていますので、これは大きな問題になっていて、金融庁をはじめ、金融機関では高齢者の資産の管理・運用について少しずつ新たな取り組みをはじめています。

たとえば、全国銀行協会では、2021年3月に、預金者本人のための入院や介護施設のために使う場合には、引き出しが可能になるという方針を打ち出しました。

成年後見制度を使うのを基本としていますが、本人確認の書類と入院や介護施設などの請求書など、必要な書類を持って行けば、引き出しができるようになるという内容です。

ただ、すべての銀行が引き出し可能になるというわけではなく、まだ銀行の対応によって違いがあるということです。

認知症になっても株式の売買を代行できる

また、株式とか投資信託などの有価証券は、やはり本人でないと売買をすることができません。ですから本人が認知症になってしまうと、その資産は凍結になってしまいます。

そのため、認知症などから高齢者の金融資産を守る取り組みもはじめられています。大和証券では、認知症になったときでも代理人をすることで売買が可能になる「ダイワのファミリーサポート」というサービスを設けています。

これは、本人が認知症になったときでも資産運用ができるように前もって、子どもなどを「口座管理人」に指定しておくというものです。認知症によって判断力が低下したとき、両親に変わり残高・取引内容の確認、注文の発注、各種書類の代筆を行うことができます。

ただし、本人が認知症を発症する前に手続きをする必要があります。認知症を発症してからでは遅いのです。

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