プーチン批判で一般教書演説を切り抜けたバイデンと米国民の反応

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ウクライナへの米軍派遣を否定し、ロシアの軍事侵攻を許す一因を作ってしまったとも言われるバイデン大統領。米国内ではその姿勢を「弱腰」と批判する声もありましたが、「プロの仕事」でかき消すことに成功したようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、3月1日にバイデン大統領が行なった見事な一般教書演説の内容と、その演説を受けた米国民の反応を紹介。さらに水面下で進行する「トランプ排除」の動きを伝えています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年3月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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ロシア=ウクライナ戦争、アメリカ人「生の反応」は?

ロシアがウクライナに侵攻してから10日が経つ中で、アメリカの各メディアは毎日このニュースを最大限の扱いで報じています。まず、その体制ですが、ここへきてウクライナ国内からの報道が強化されています。

基本的には、「西部のリヴィウにはメインキャスターが陣取る」「首都キーウからは戦争特派員が報じる」という2段階で、その他の主要都市にはウクライナ人の記者による機動的な報道体制を敷いています。

では、アメリカという国のリアクションはどうかということになりますと、まずは先週の3月1日(火)の晩に行われたバイデン大統領の「一般教書演説」が注目されました。

そのバイデン演説ですが、具体的な論点ということでは、なかなかどうして難しいものがあったのです。

つまり、バイデンとしてはこの演説において、次の3つのメッセージをアメリカ国民に伝える必要がありました。

1)アメリカは断固としてウクライナを支援すること。特に超党派として、民主、共和両党が分け隔てなくこれを宣言すること。

2)しかし、NATO加盟国領土が侵犯されない限り、アメリカは戦闘には参加しないという原則は曲げられないこと。

3)経済制裁に関しては宣言するが、最後の切り札である「ロシアからのエネルギー禁輸」は直接ガソリン代に響くので、国民全員へ向けていきなり宣言はできないこと。

これは難しい課題です。戦闘には参加しないが支援するという立場は、ニュースに関する知識のない人間にはなかなか理解されない危険があるからです。勿論、理由としてはアメリカ軍とロシア軍が直接交戦状態に入ってしまうと、第三次世界大戦になってしまうからですが、だからと言って「米軍は出さない」という宣言をするのは「バイデンは弱いリーダーだ」という印象を与える危険があります。

しかしながら、このこと、つまりNATO非加盟であるウクライナとロシアの戦争に関しては米軍は派遣できないということは、ここで国民にクギを刺しておかねばならない問題でもあるのです。

そんな難しい課題を抱えての演説ですが、事前にはキナ臭い動きもありました。共和党の一部からは、「アフガン撤退の際の混乱と、対ロシア交渉の失敗」をバイデンは「謝罪せよ」という動きがあったのです。つまり、アフガンで混乱を生じて「弱いアメリカ」という印象を与え、その上でロシアに対する戦争回避の外交努力も失敗した、これはバイデンの失態だという「声」でした。

こうした批判が増大しないためにも、上に掲げた3原則、つまり超党派での支援、米軍派遣はなし、最大の制裁も今回はなし、という3つの課題を堂々と貫く必要があったのでした。

その演説ですが、慣例に従って議会議事堂の下院本会議議場に上下両院議員を集めて行われました。昨年は人数を絞ったのですが、今回は基本的に議員は全員出席となり、但し、依然として会場の定員100%まで入れるわけにはいかないので、下院議員の多くは2階の傍聴席に座っていました。

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