プーチン批判で一般教書演説を切り抜けたバイデンと米国民の反応

 

その後、エンディングに近づいた時点では、

「コロナ禍に関しては、リセットの時だ。対立を止めよう」

「(BLM運動を受けて主張されていた)警察の予算削減は間違いだ。警察は強化するべきだ」

「南の国境をめぐる問題は私が解決する」

という具合に立て続けに「共和党との合意、和解」を訴えるメッセージを繰り出し、最後にその仕上げとして、

「超党派で4つの政策をやろう。1)鎮痛剤濫用禍の問題、2)メンタルヘルス(特に子供)ネットのプライバシー問題と保険、3)退役軍人へのケア、4)ガン制圧に注力して25年で死亡率半減、の4つだ」

と述べて、無理矢理にも共和党議員団を起立・拍手へ持っていってその流れで、「この通り、連邦(ユニオン)としての団結の状態(ステート・オブ・ユニオン)は極めて強力だ」という決まり文句で演説を締め括ったのでした。

つまり、ウクライナ問題と、超党派合意のできる内政課題という、共和党も一緒に起立し拍手できる内容を、最初と最後に持ってきて「自分は分断でなく和解の大統領だ」という演出へと持っていったのでした。

勿論、大統領は高齢ということもあって、滑舌など100%完璧ではありませんでしたが、実に巧みなスクリプクトであり、演説としては成功といえると思います。少なくとも、この約1時間の演説の間、「ドナルド・トランプ」という名前は、議場には全く存在感はありませんでした。

これが現時点でのアメリカの国策であることは間違いないわけですが、その後は例えばですが、この演説を受けて「オルガリヒ」への摘発が動き出しています。

例えばですが、ニューヨーク市内では、ロシア系の「外食宅配サービス」である「バイク」社が、制裁を受けて運転資金が枯渇するという見方が広がりました。このため、配達員の多くが契約を解除してしまい、企業としては事実上行き詰まった格好です。

大富豪への摘発の動きとしては、具体的にはマンハッタン区における不動産が話題になっています。

例えば、今回の制裁リストの筆頭に挙げられている、シフネフチグループの「石油王」と言われる、ロマン・アブラモビッチの場合は、総資産13.8ビリオンドル(約1兆5,000億円)を擁し「プーチンの金庫番」と呼ばれる存在です。

そのアブラモビッチは、マンハッタン島のセントラルパークに近い「アッパー・ウェスト」地区に豪華コンドミニアムなど3件の不動産を有しており、その総額は約92ミリオンドル(約105億円)と言われています。

また、ロシア・アルミ(ルサル)のオレグ・デリパスカの場合は、やはりセントラルパークの周辺に2件、合計で47ミリオンドル(約50億円)の物件を保有している模様です。

報道によれば、FBIなど米国政府当局は、こうした資産を差し押さえる手続きに入っているそうですが、問題はその多くの所有権が複雑になっていることで、例えば、アブラモビッチの場合は、この豪華な3件の物件を離婚した前妻のダーシャ・ズコーバの名義としているようです。

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