ここへ来て、水面下で動いているのがトランプ排除の動きです。
顕著なものとしては、トランプ政権後期の司法長官であったウィリアム・バーが書いて、本日(3月8日)に発売になる回顧録 “ONE DAMN THING AFTER ANOTHER, Memoirs of an Attorney General”(『凶事の連続、ある司法長官の回顧』とでも訳したらいいのでしょうか…)です。
バーは長官在任時にはあらゆるレトリックを使って、トランプ政権を擁護していましたが、退任後はまず「選挙結果を認めない」というトランプからは徐々に距離を置いてきました。
そのバーが回顧録でどうやらかなり公然と「トランプ批判」を行っているようなのです。バーとしては、共和党員という立場は変わらないので、民主党を利することはしたくないとしており、また一部には「自分が訴追されないための巧妙な自己弁護」という批判もあります。
ですが、本の内容次第、つまり「トランプとロシアの癒着」だとか。「トランプがいかにゼレンスキーに対して失敬だったか」に関する新ネタなどが出るようですと、事態は相当に動くことが考えられます。
これは想像ですが、例えばの話、トランプがプーチンに「ウクライナに関する大幅な譲歩」の密約をしていたとか、その密約に基づいて「ゼレンスキーを突き放すような言動をしていた」というような材料が出る可能性もあるわけです。
そこまで行かなくても、トランプの「ウクライナ疑惑」つまり、ゼレンスキーに対して「バイデンの次男を訴追しないと、軍事援助を打ち切るぞ」と脅迫した事件は有名であり、その新しい周辺情報が出ただけで、トランプを政治的に「詰み」にすることは可能かもしれません。
共和党内の動きもこれにある種、呼応しているとも言えます。例えば、フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員などは、すっかり「ウクライナ支援強硬派」に転じており、トランプの「アメリカ・ファースト・オンリー」というスローガンに対して息を潜めていた頃とは顔つきが違ってきています。
ウクライナへの支援の声が高まることは、同時にトランプが忘れられて行くということになる、アメリカではそのような方程式が回り始めている、少なくともその兆候は出てきていると言えます。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年3月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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