プーチン批判で一般教書演説を切り抜けたバイデンと米国民の反応

 

その離婚と名義変更は2017年から18年に行われており、これは米国によるオリガリヒ制裁が発動する直前となっています。これはトランプ政権が、ロシア疑惑を「隠す」ためのアリバイ作りのようなニュアンスで実施したもので、もしかしたらトランプのルートから、制裁の予告がアブラモビッチ側に漏れていたのかもしれません。

ということは、これは推測になりますが、アブラモビッチの場合は、離婚も譲渡も偽装という可能性が否定できないし、トランプとの癒着ということもゼロ%ではないと思われます。その「前妻」で、巨額の不動産の名義人であるズコーバは、ロシアによるウクライナ侵攻を批判しているようです。これも興味深い情報であり、制裁逃れを目的とした偽装かもしれません。

デリパスカの場合も、NY市内の資産を親族名義に書き換えています。FBIなどは、こうしたオルガリヒたちの資産隠しを「資金洗浄(マネー・ロンダリング)」と見なして、法律に基づいて摘発してゆく構えです。一方で、オルガリヒの多くは、家族や親族への名義変更だけでなく、持株会社組織を間に入れて、二重三重に法人化して所有権を秘密のベールの奥に隠そうとしているようで、捜査は簡単には進まないだろうという説もあります。

さて、その他の動きとしては、これはいかにもアメリカらしい行動ですが、中西部の保守州では、酒屋が「ウォッカ販売を自粛」する動きになっています。オハイオ州などでは、州税確保のために州の直営酒屋というのがあるのですが、そこではウォッカを棚から撤去したばかりか、メディアを入れて「叩き割る」というパフォーマンスも行っています。

また、再びNYの話題になりますが、METオペラは、当代最高のソプラノ(ややメゾ寄り)と言われるロシア出身のアンナ・ネトレプコに関して、向こう2年間の契約をキャンセルしました。METは彼女に、「プーチンと距離を置く」という宣言を要求したものの、返答がなかったようです。

一方で、ロシアからの原油輸入禁輸ですが、現時点では秒読みと言われています。したがって正式決定はまだですが、既に末端におけるガソリン価格は急上昇しており、1ガロン(3.8リットル)あたりの価格は史上最高となり、最も高額なカリフォルニアでは7ドルを超えてきています。一部には9ドル台は時間の問題という解説もあります。

NBCなどのニュースでは、このガソリン価格の急上昇に関しては、「ウクライナへの連帯ということでは仕方がない」という「市民の声」を紹介して、一種のバイデン政権の代弁をやっていますが、基本的に、3月1日の議会演説で「アメリカとウクライナの連帯」を演出したことで、ガソリン価格を国民に納得してもらう作戦のようです。当面は、これが効果を持つかもしれません。

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