次は「あの国」か?ウクライナで人民虐殺のプーチンが進める“謀略”の中身

 

NATO(欧米諸国)とその仲間たちの限界は、“世界は一致団結して対ロ制裁を課す”と報じられている多重の経済制裁での乱れにも表れています。

例えば、「非常に重大かつ強力な手段に踏み切った」と“評価”される【ロシアの金融機関のSWIFTから除外】は、ロシア最大の銀行であるズベルバンクを含め、欧州の天然ガス購入に関わるtransactionsを担うエネルギー系は“除外リスト”から除外されています。

ただでさえ高騰が続くガス価格への懸念から、強力だが発動国にとっても無傷では済まないとされる“諸刃の剣”がSWIFTカードなので、結局はぎりぎりのバランスを取るために、制裁を徹底できていません。

欧米の政府もメディアも挙って、「ロシアに対して経済戦争を仕掛け、対ウクライナ戦争の戦費を賄えなくするのに、じわじわ効いてきている」と伝えていますが、実際には、仮想通貨を含む“ほかの”国際決済手段を通じた対応を取ろうとしていますので、どこまで効いているのかは不透明です。

石油のSeven Sistersと呼ばれる最大手石油会社を抱える欧米諸国は、【ロシア産原油の購入停止】という措置も掲げましたが、紆余曲折の末、禁輸措置を決定した米英に対し、他のG7諸国も、NATOの加盟国も、この措置に二の足を踏み、追随する動きをまだ見せていません。

ドイツに至っては、ドイツとロシア間の天然ガスパイプラインであるノードストリーム2(全長1,240キロメートル)の稼働認可を凍結するという大きな賭けに出たばかりですから、追加的な措置は取りづらいと思われます。

ちなみに米英の石油会社も「ロシア産原油の禁輸には応じるが、制裁対象に天然ガスは含まれていないため、エネルギー安全保障の観点から、引き続きロシア産天然ガスの購入は継続する方針」としているように、ロシアのアキレス腱ともいえるエネルギーセクターへの決定打とはなっていません。

そして仮に天然ガスまで止めたとしても、ロシアには、有力な購入先として中国が控えており、すでに両国間で合意済みの「シベリアの力」に加えて、中国の石油天然ガスの安定調達を後押しするという“おまけ”までついてきます。

チャイナマネーがロシアに流れることで、報じられているほど、ロシア経済への打撃とはならない可能性が高くあります。もちろん、中国が立場を転換させると話は別ですが。

他には、スターバックスやマクドナルド(ロシアが西側の自由経済を受け入れたシンボルとCNNは報じています)などが相次いでロシアでの営業を停止することを決め、休業中も従業員には給与を支払い続けるという、とてもheroicな対応を発表しましたが、これ、実際にどこまで対ロ制裁としてインパクトがあるでしょうか?

心理的な効果は確かにありますし、これらのチェーン店にとってもアピール材料になるでしょうが、実際の効果はあまりないように思われます。

領空の飛行を禁じるという相互措置は、移動の自由を奪う手段として、確かに痛手となっているかもしれませんが、それは欧米各国や日本にとっても同じで、これは痛み分けとなるでしょう。

欧米諸国が次々とロシア機の領空通過を禁じている半面、日本は禁止措置を取らないことで、不思議な圧力が国内外からかかっているようですが、在留邦人の帰国のチャンネルをキープするという方針に照らすと、私は適切な判断だと感じています。

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