次は「あの国」か?ウクライナで人民虐殺のプーチンが進める“謀略”の中身

 

そのような駆け引きが行われる中、実際の戦闘は激化の一途を辿っています。激化に比例して、UNHCRの発表では「少なくとも210万人のウクライナ人が国外に避難」しており、相当数の市民が国内避難民となっているという惨状を伝えています。

両親が母国防衛のために戦闘に赴く中、小さな子供たちが一人国境を越えていく映像は、涙なしには見ることが出来ません。

現時点では、周辺国(EU諸国)におけるウクライナ人へのシンパシーも強く、皆、挙って受け入れを申し出ていますが、130万人以上が到着したポーランドでは、徐々に受け入れのキャパシティーを超え始めていると言われており、以前、シリア難民問題が起こった際のようなバックラッシュが起きかねないとの懸念も耳にするようになりました。

「ウクライナ人は我々と同じくヨーロッパ人だからそんなことはない」という声も多く聞こえるのですが、今後、難民受け入れに際して受け入れ国の負担が一気に増大していく中、どのような状況が訪れるのか、とても懸念しています。

そして常軌を逸していると報じられる攻撃が、ウクライナ国内に点在する“稼働中”の原子力発電所や関連施設への攻撃です。今のところ放射能の漏洩という最悪の事態には至っていないとのことですが、ウクライナの電力供給を支える原発への攻撃は、残念ながら確実にウクライナ国内の電力供給危機を作り出しているようです。

どのような意図がこの作戦の背後にあるのかは分かりませんが、電力を遮断することで、ウクライナ市民の戦闘意欲を削ごうとしていると思われます。

そして極めつけは民間施設への攻撃の頻発です。アパート(集合住宅)がミサイル攻撃や爆撃で崩壊の危機にある映像が多く流され、住むところを失ったか、恐怖に駆られた市民が国外への避難を決断したり、地下に潜って安全を確保しようとしたりしています。

これ、当初のプーチン大統領の説明とは大きく異なりませんか?「軍事施設への戦略的な攻撃を加える」と確か聞いた気がしますが、今は確実に市民がターゲットになっているように思われます。

その極めつけは3月9日に行われた東部マリウポリ(Mariupol)の産院への攻撃です。中庭に爆弾が落とされたことによる爆風は産院の窓を吹き飛ばし、壁を破壊し、多くの母子が生き埋めになったと伝えられています。実際の被害状況についてはわかりませんが、これは確実に一線を越えてしまった悪例でしょう。

生命の誕生という希望の象徴と言える産院を意図的にターゲットにしたのであれば、確実に越えてはいけない何かを超えてしまったことになります。

ところでこのマリウポリの案件ですが、とても大きな矛盾を含んでいます。確か2月24日にドンバス地方(ウクライナ東部)へのロシア軍の“派遣”を決定する前に、ドネツク州とルガンスク州の“共和国”をプーチン大統領は、両共和国のリーダーたちの依頼を受けて、独立承認していますが、このマリウポリは独立承認したドネツク共和国の主要都市です。

とても奇妙な問いになるかもしれませんが、この常軌を逸した攻撃に対して、プーチン大統領は果たしてドネツク政府の合意を取り付けたのでしょうか?

仮にNOだとしたら、非常に不可解な状況を生み出しています。しかし、もしYESだったら…。まさに地獄を通り越した酷い、異常な状況ですし、これはどのような理由があったとしても、決して看過できません。

このような蛮行に直面しても、果たして国際世論は変化したでしょうか?

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