ちなみにアメリカ政府の高官がボソッとつぶやいたのは、「アメリカはプーチン大統領の異常な行動を止めるために米軍を投入したくて仕方がないが、それが核保有国同士の終わりなき戦争を引き起こしかねないことから、ぎりぎりの線で思いとどまっている。しかし、もう限界だ」という内容でした。
でもプーチン大統領が事あるごとに用いる【核兵器使用のカード】は、非常に残念ながら、対ロ武力介入への大きな抑止力になってしまっています。世界は非難しつつも、決定的な対策を取り切れておらず、プーチン大統領率いるロシアは、国民からの支持が離れていっているにもかかわらず、大ロシア帝国再興に向けて邁進しています。
その最たる例が、ジョージアにおけるロシアの作戦です。
「ジョージア?ウクライナじゃなくて?」と不思議に思われるかもしれません。
メディアはウクライナの悲劇のニュースばかりですが、実は、世界の目がウクライナに縛り付けられている間に、ロシア発の戦火は実際に広がり始めています。
それは、ジョージア国内でロシアが“占領中”のアブハジア“共和国”と南オセチア“共和国”において、ロシア主導で議会選挙と大統領選挙が近日中に実施されるとの情報です。
つまり今回ドンバス地方で行ったあのアレンジメントが、ジョージアでも実施されていることになります。もちろんジョージア政府はロシアによる内政干渉だと激しく非難していますが、私たちの目がウクライナの悲劇に集まっている裏で、ロシアとジョージアの間にも一触即発の緊張が高まっているとの情報が入ってきました。
もしこれが本当だとしたら、今回のプーチン大統領の賭けは、彼以外誰も考えていなかったと思われる規模になるのでしょう。
その“答え”が見えてくるのは、北京での冬季パラリンピックが閉会する3月13日からスタートする“来週”以降になってくると思われます。
「え、また?前は北京冬季五輪の閉会後、21日には…って言っていたよね?」と突っ込まれるかもしれませんが、実際に大きな動きが起きました。
3月13日にパラリンピックが閉会した後は、中国のメンツをつぶす案件は取りあえずなくなるため、プーチン大統領も動きやすくなりますし(総攻撃でないことを切に祈ります)、中国も外交的な表舞台に出てきやすくなるでしょう。
中国の動きが、ウクライナのクレバ外相が望んだように、仲介役としての形式で、外交的な影響力を通じてプーチン大統領にブレーキを踏ませるように動くのか。
それとも「外交的な、対話による、一日も早い停戦を望む」といいつつ、がっつりとロシアの肩を持つことになるのか。
「ロシアがまさかウクライナへの全面的な侵攻に踏み切るなんて」と中国は読み違えたようですが、すでに世界を敵に回して孤立したプーチン大統領が唯一、話を聞かざるを得ないのが、もしもの時にロシアを支えてくれる中国のみであることも事実です。
今年秋の全人代で第3期目の国家主席への就任が“予定通りに”叶い、それが“終身国家主席”体制につながる足場が固まった暁には、長年の夢であるOne Chinaを実現すべく、台湾併合へと舵を切ることになるでしょう。それが平和的な併合なのか、それとも武力による併合に踏み切るのか。
今回の“盟友”プーチン大統領の例からいろいろと学んでいると思われる習近平国家主席は、どのような一手をその時に打つのか?
そして、現在、ロシアが直面しているような全世界からの孤立状態に陥った際に、ロシアに抜け道を作ってもらうために思い切り恩を売ることを画策するのか?
その一手の方向性は、もしかしたら来週あたりからじわじわ見えてくるかもしれません。
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