次は「あの国」か?ウクライナで人民虐殺のプーチンが進める“謀略”の中身

 

しかし、各国のリーダーたちのそれぞれの思惑が、もしかしたら問題解決に向けた働きかけを邪魔しているかもしれません。

フランスのマクロン大統領は年初より何度もプーチン大統領と直接的に(オンライン含む)話し、ゼレンスキー大統領とも会談しながら、仲介役を買って出ていますが、彼には間近に迫った大統領選挙という独自の理由が見え隠れします。

国内での支持率は、極右の同士討ちのおかげで上がってきていますが、まだ再選に向けて万全とは言えず、若干強硬的な経済改革に対する国民の反発を和らげる必要があるようです。外交面で目立つことでイメージ向上に勤しんでいるようですが、それは果たして、ウクライナの人々やロシアの市民の利益になるかと言えば、分かりません。

フランスは他の欧米諸国に比べるとロシアと近いと考えられているため、プーチン大統領へのアプローチはしやすいのだと思われますが、それでもフランスは今回、問題になっているNATOの主要メンバーであり、本来はNATOの立場を代表した交渉を行うポジションにいるはずで、調停役には不向きです。プーチン大統領からはうまくあしらわれているように感じますが、マクロン大統領はめげずに頑張るようです。

今回、外相会談をお膳立てしたトルコのエルドアン大統領はと言えば、関係と相互印象が悪化し、なかなか関係修復の機会が見つからない欧米(NATO)と、微妙な緊張関係が続くロシアに挟まれているという稀有な立ち位置にいます。

一見、調停役に適しているように思われますが、トルコには主要国との関係改善という大きな目的があり、かつロシアのプーチン大統領にも通じるところがありますが、“オスマントルコ帝国の再興”を夢見て周辺国のみならず、アフリカ・中央アジアなどにも影響力を拡大しています。

今回も両国外相の対面での協議のお膳立てをすることで、発言力の回復を狙っているとも受け取れます。ゆえに、本当に今回の紛争の解決に関心があるかと言えば、個人的には疑問です。

欧米、NATOのリーダーたちに至っては、先週にも違和感としてお伝えしましたが、散々プーチン大統領を煽ってきて、いざ武力侵攻に踏み切ると、一気にトーンダウンし、ウクライナからの再三の要請も、それぞれの国家安全保障の観点からスルーしています。

今週話題になったポーランドにあるMig-29戦闘機のウクライナへの貸与・派遣にアメリカが直接的な介入を避けるためにNOを突き付けたことはその一例です。

また、ゼレンスキー大統領が要請するウクライナ上空への飛行禁止区域の設定は、確かにロシアの怒りを買い、ロシアにさらなるエスカレーションを決意させる格好の理由にされかねず、それは同時にNATOとロシアの戦争へと世界を導くことになる、つまり第三次世界大戦へのslippery slopeになるとの考えから、NATOは全面的に拒否するのは理解できますが、ウクライナで善戦しているウクライナ軍や戦闘員に対する武器供与をどこまでロシアが看過するかは、そろそろ限界に達していると思われることから注意が必要でしょう。

戦時という特殊状況も加味されていると思われますが、「NATOは結局、ウクライナを見捨てた」というゼレンスキー大統領の叫びは、実際にどのような意図が隠されているかは別として、理解できます。

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