なぜ『鬼滅の刃』が興行収入歴代1位の日本映画産業の未来は暗いのか

 

中南米

中南米も大きな市場だ。

映画の国別市場規模(ユネスコ、2017年)として、11位にメキシコ、12位にブラジル、17位にアルゼンチン、26位にコロンビア、30位(ペルー)、35位(チリ)、39位(ベネズエラ)、51位(コスタリアカ)、55位(ボリビア)、58位(ドミニカ共和国)、62位(ウルグアイ)、81位(ホンジュラス)を擁する。

中南米平均の数字として、アジア、オセアニアEUの次、中東やアフリカを上回る規模にまで成長した。とくに2005年以降、5年ほどで70%増となる急成長を果たす。

ただ、中南米といっても、北から南まで33の国が存在する。それぞれ、各国の映画産業の規模はまちまちで、大きな映画産業規模を持つメキシコやアルゼンチンのような国もあれば、パラグアイのような産業としてほとんど成立していない国もある。

この地域の映画産業の特徴として、強力な各国の映画協会の存在があげられる。アルゼンチンのINCAAや、メキシコのIMCINEのような各国の映画協会が自国の映画文化を守ろうと動いている。

世界の映画祭の舞台で、自国の作品を推薦したり、小規模なインディペンデント映画を保護する政策を提言したり、自国映画を国内のアート系上映館で積極的に上映したりと、様々な取り組みを行う。

このような取り組みを行う理由として、ハリウッド映画から、自国映画を守ろうという側面もあるが、むしろ中南米の歴史的な意味合いが大きい。

この地域では過去、軍事独裁政権が存在した。アルゼンチンでは、実際に軍事政権下、多くの死者や行方不明者を出し、そのような時代には、自由に映画をつくることなど不可能に近い。いつ、またこのよう軍事政権が誕生するか、分からない。そして表現の自由が脅かされるかわからなない。

その危機感のもと、各国の映画協会は、映画文化を守ろうとしているのだ。中南米で実際に映画に関わる人々は、ハリウッド映画への「カウンター」として、あるいは、政治的権力へのカウンターとして、自国の映画をとらえている。

助成金についても、フランスのよう絶大な信頼をおけるものではく、一個一個、個別に吟味する。ときには、他国の助成金も活用するという。

このような取り組みのもと、メキシコは2000年代以降、ギレルモ・デルトロ、アルフォンソ・キュアロン、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥなど有名な世界的巨匠監督を生み出した。

日々流れるニュースを学術的視点や新しい角度で解説するメルマガはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • なぜ『鬼滅の刃』が興行収入歴代1位の日本映画産業の未来は暗いのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け