北米
今でこそ中国市場にトップの座を譲った北米(米国・カナダ)の映画市場であるが、しかし現在においてもなお、世界の映画産業をけん引しているのはハリウッドであることは間違いない。
2021年の北米興行収入は44億6,900万ドル(約5100億円)、コロナ渦による映画館の営業自粛で打撃を受けた2020年度(21億300万ドル)や対比で倍以上まで回復した。それでも、2019年の113億2,000万ドルからは60%以上下回り、以前、厳しい状態が続く。
21年度は、春ごろから映画館が営業再開したものの、21年度前半の営業自粛や有力作品の公開延期、あるいは新作映画の配信されることが増えていったことが背景にあると思われる。
業界シェアはウォルト・ディズニーがここ数年、1位の座をキープし続けている。しかし21年度で全体の興行ランキングトップ10の中に入ったのは、2位『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2億2,000万ドル)、4位『ブラック・ウィドウ』(1億8,000万ドル)、6位『エターナル』(1億6,000万ドル)の3本にとどまった。
ディズニーは作品の配信シフトを強め、劇場と配信の両方で収益化を目指す戦略に舵を切った。他方、苦戦したのはワーナー・ブラザーズ。トップ10圏内には1作品も入らず、12位に『ゴジラ vsコング』(9900万ドル)、13位『DUNE/デューン 砂の惑星』(9,300万ドル)となった。相次ぐ公開予定の延期に加えて、『DUNE』が期待された以上の結果を残せなかった。
ハリウッド映画といえば、「大作映画」だ。ハリウッド映画は、1億ドル以上の製作費を費やした映画を「ビッグ・バジェッド」や「イベント・ムービー」、4,000万~6,000万ドル規模の作品を「ブルーチップ」、1,000万~2,000万ドル規模の低予算映画を「ロウ・バジェット」または「ポートフォリオ」という。
ただ、ビッグ・バジェット映画がこれほどの予算規模となると、米国国内だけでは3億ドル以上の劇場収入を記録しないと事実上はペイできず、国外の上映により初めて利益を出す構図となっている。
なぜ、ハリウッド映画がこのような大作映画化していったかというと、テレビとの差別化によるものであった。
ハリウッドも、他国の映画市場と同様、1950年代にテレビの普及により大きな転機を迎える。ただ、当初は対テレビ戦略として他国と同様、露骨な敵視戦略を取っていた。
しかし50年代半ばには、ハリウッドのメジャースタジオが相次ぎテレビ向けの番組制作に乗り出し、テレビ放映向けに映画スタジオが自社の過去の作品の売却やリースを行っていく。
一方で、日本や欧州諸国が映画観客動員数を大きく落とした一方、ハリウッドだけは最盛期の3分の1の10億人にまで食い止めることができた。そのことについては、AFI(American Film Institute)が大きな役割を果たす。
具体的には、人材育成や35mmの映画フィルムを各大学に寄贈し、映画産業の社会的地位の向上のため地味な努力をかけていく。
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