橋下徹氏も鈴木宗男氏も。なぜ彼らは露のウクライナ侵略を擁護するのか?

2022.04.13
 

ロシア帝国―ソ連時代の“偉大なロシア”を念頭に置いているプーチン大統領にとっては、ウクライナの問題は、“ロシアの国内問題”かもしれない。しかし、そうした、現在の主権国家同士の関係を無視した勝手な世界観を認めれば、大変なことになる。全ての主権国家も、いつ、「お前は本来わが国の一部だ」と言いがかりをつけられて、攻められる危険にさらされる。

左派や親米保守の人々はアメリカが地域紛争に介入するたびに、アメリカの帝国主義だと言って非難するが、アメリカは自分の安全保障が直接脅かされない限り、他の国の紛争にいきなり介入したりしないし、介入する場合でも、大義名分が立つよう、相手に何度も呼びかけるし、単独行動にならないよう、他の西側諸国と連携行動を取ろうとする。今回のロシアはそうした、正当化のための外交的準備さえやっていない。

橋下氏は再三、戦闘を続ければ一般住民が犠牲になるので、ウクライナ側は多少無理な要求でも飲んで早期停戦にもっていくべきだと主張している。しかし、ロシアがいつ首都を制圧して、ウクライナを占領するか分からない状態のまま停戦すれば、その時は一般市民の命が救われても、ロシア支配のもとでどういう目に遭うか分からない。闘い続けるのと、ロシアの実効支配を受けるのとで、どちらが危ないか、どちらがより人間らしいあり方か選択するのはウクライナ人である。仮に、ウクライナ政府が勝手に戦争をしているのであれば、市民の協力が得られず、すぐに崩壊してしまうだろう。

更に言えば、橋下氏のような、国政にも関与している有力な政治コメンテーターが、市民の犠牲を避けるために、不当な要求でも飲むべき、というようなコメントを出し続ければ、それが日本の政治家の発想か、と取られかねない。ただでさえ、戦後七十数年間にわたって、戦争を体験してこなかった日本は、アメリカ軍が守ってくれなかったら、何もできない、と他国から思われがちだし、私たちの多くもそう思っている。他の国が自分の主権を守るために必死に戦い、そのおかげで、国際正義の基本原則が辛うじて守られている時に、有力な保守系の政治家が、〈red better than dead〉的な発言をすべきではない。

橋下氏は、国際政治には裏がある、ということを強調したいのだろうが、先に強調したように、ロシア側の戦闘行為をやめさせ、日本に火の粉が飛んでこないようにするには、日本は今何ができるかを論じるべき時に、“裏”の憶測ばかりしても仕方ない。拘ると、単なる目立つための逆張りになってしまう。こういう時こそ、普段リアリストとして売っている評論家の真価が問われるのではないか。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

仲正昌樹

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