橋下徹氏も鈴木宗男氏も。なぜ彼らは露のウクライナ侵略を擁護するのか?

2022.04.13
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ロシア側の総司令官にシリアでの残虐行為が疑われる将軍が任命されるなど、さらなる市民の犠牲が心配されるウクライナ紛争。ニュース番組やワイドショーでも連日取り上げられていますが、ウクライナ側の非を指摘するかのようなコメンテーターも散見されます。そんな人々を批判するのは、金沢大学法学類教授の仲正昌樹さん。仲正さんは今回、このタイミングでロシアを擁護するかのようなコメントを並べる人々を「プロ失格」とし、その理由を論理的に述べています。

プロフィール仲正昌樹なかまさまさき
金沢大学法学類教授。1963年広島県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修了(学術博士)。専門は政治・法思想史、ドイツ思想史、ドイツ文学。著者に『今こそアーレントを読み直す』(講談社)『集中講義!日本の現代思想』(NHK出版)『カール・シュミット入門講義』(作品社)など。

ウクライナ問題でロシア側を擁護したがる人たちの思考の無原則性

ウクライナ危機が勃発してから既に1カ月半が経とうとしている。当初は、軍事力で圧倒するロシアが数日で首都「キーウ」を制圧し、傀儡政権を樹立して、ウクライナをかつてのように事実上の属国にしてしまうと予想されていたが、ウクライナ側が予想外の頑張りを見せ、ロシア側の被害も拡大するなか、西側諸国の多くは、積極的に軍事介入することは避けながらも、「ウクライナへの(軍事物資を含む)支援―ロシアへの経済制裁」でまとまっている。これまでアメリカやEUの対ロシア制裁に距離を置いていたインドも、日本の世論も、国連安保理でロシアによる民間人虐殺を非難するに至った。

同じ東アジアで起こっているウィグルやチベット、香港の問題以上に強い関心を見せ、「一方的な軍事侵略は許されるべきではない」、という方向でまとまっている。しかし、一部には、ウクライナ側にも問題があったとか、アメリカや西側メディアの宣伝に騙されてはいけない、と言いたがる知識人も少なからずいる。彼らは何を考えているのだろうか。

鳩山元首相、橋下元大阪市長、鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)などは、コメディアン出身で政治の素人であるゼレンスキー大統領が、NATO加盟問題でいたずらにロシアを刺激したことが問題であることを示唆している。ウクライナ問題でのマスコミの動向に批判的な人たちのほとんどは、そこを強調する。しかし、これを今言うのは、おかしな発想であり、プロの政治家や法律家とは思えない。

喧嘩が起こった時に、やられている側にも問題があるというのはよくあることだ。しかし、先にはっきりした「暴力」行為に及んだのがどちらかはっきりしており、なおかつ、攻撃を開始した方が相手を一方的に攻撃し続け、相手は防戦一方の状態になっているのに、殴らせてしまった責任に言及し、攻撃側を間接的に擁護するのは不公平である。少なくとも、戦闘が完全に終結し、賠償や原状回復が問題になってくる段階になってから議論すればよい。鳩山氏たちのやっていることは、喧嘩のまっ最中に、敗けている方に向かって、「君にも問題があったんじゃないの」、と言っているようなものである。

また、鳩山氏のように、ロシア側の主張をなぞって、ウクライナ東部で、ウクライナ政府がロシア系の住民を虐殺したことを指摘する人や、テレビ朝日のモーニングショーのコメンテーターの玉川徹氏のように、東ウクライナでの紛争をめぐるミンスク合意に違反する軍事行動をウクライナ政府が取ったことが、ロシアの侵攻の原因になったと主張する人もいる。確かにウクライナ東部で実際に何が起こっているかは定かではないが、あくまで「ウクライナ」国内の問題である。仮に、ロシアやロシア系住民の武装勢力が主張することが正しかったとしても、「他の国」で起こっている紛争に、問答無用でいきなり軍事介入し、当該地域だけでなく、首都まで占拠し、国家を解体に追いこんでいい理由にはならない。ウクライナ側がロシアの安全保障を脅かしたわけではない。

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