また“安倍絡み”。朝日記者が『週刊ダイヤモンド』記事に「検閲要求」の傲慢

 

週刊ダイヤモンド3月26日号に掲載されたこのインタビュー記事で、核シェアリングについて安倍氏はこう発言している。

「核の議論をめぐってはドイツを見習えという人がいます。…ドイツは同時に、国内に米国の核を配備しているのです。…日本は拡大核抑止という形で米国の核の傘の下にあります。しかしドイツの中に核が配備されているのと、日本国内には配備がなく米国本土にあるものに頼るということでは、抑止力においての違いは大きい」

これは、あえて拡大抑止と核シェアリングの概念をゴチャマゼにした論理展開である。

この答えを導き出した質問のなかに、核シェアリングが「拡大抑止と同じ」などとという文言が出てきたら、安倍氏自身が核シェアリングの概念を誤解していると思われてしまう。そこに不安を覚えたのではないか。

「明日朝から海外出張するので、ニュークリアシェアリングの部分のファクトチェックをしてもらえるとありがたい」と安倍氏は峯村氏に依頼した。そこで峯村氏は3月10日、副編集長に電話し、ゲラをチェックしたいので送るように求めるとともに、事実確認を徹底するよう助言したという。

そのおかげかどうか、結果的に安倍氏側が心配したような記事にはならなかったが、週刊ダイヤモンド側とすれば、編集段階でいきなり他社の記者から「ゲラを見せろ」と言われたら、「ふざけるな」と怒りたくなるのは当然だ。

朝日新聞社によると、ダイヤモンド編集部から「編集権の侵害に相当する。威圧的な言動で社員に強い精神的ストレスをもたらした」と抗議を受け、同社は峯村氏から話を聞くなど、調査を実施した。

その結果によると、峯村氏は「安倍総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと語ったという。

峯村氏は4月20日に退職することが決まっている。気分のうえでは、もはや記者というより安倍氏の側近だったのかもしれないが、それは言い訳にはならない。

昔から政治家と記者は互いに利用しあうことが多い。記者が政治家の手先となって動くことすらある。それは、報道の公正中立を信じる読者、視聴者に対する裏切りだ。そうしたある種の“共犯関係”ができると、記者がその政治家の不利にならないよう、情報を隠したり、ゆがめたりすることも起こりうる。だから、少なくとも記者である間は、政治家とは一定の距離を置く必要があるのだ。

筆者は、官邸記者クラブに所属する記者が、総理に記者会見対策をアドバイスした「指南書問題」を思い出した。

2000年5月、当時の森喜朗首相が「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」と発言して大きな問題になり、釈明記者会見が開かれた。その前日の朝、首相官邸記者室の共同利用コピー機に「明日の記者会見についての私見」と題した文書が残されているのが見つかった。その内容の一部。

会見では、準備した言い回しを、決して変えてはいけないと思います。色々な角度から追及されると思いますが、繰り返しで切り抜け、決して余計なことは言わずに、質問をはぐらかす言い方で切り抜けるしかありません。先日、総理自身が言っておられたように、ストレートな受け答えは禁物です。…

NHKの記者が、感熱紙に印刷されたワープロ文書をコピーし、FAX送信したさい、感熱紙を置き忘れたものらしい。

記者が有力政治家の懐に飛び込み、情報を得るために、ある程度のギブ&テイクは許されるだろうが、さすがに、ここまでの出来レースとなると、国民を愚弄していると言わざるを得ない。

国家権力と偏向メディアの歪みに挑む社会派、新 恭さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • また“安倍絡み”。朝日記者が『週刊ダイヤモンド』記事に「検閲要求」の傲慢
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け