災害ストレスでも寿命が縮む。人間の老化を加速させる要因とは?

Miniature,People,And,The,Concept,Of,An,Aging,Society.
 

私達の命の長さである「寿命」とはいったいなんなのでしょうか。そんな疑問を持ったのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、日経新聞の記事から引用した寿命を縮める要因についてと、さまざまな仮説を挙げて寿命について考えています。

時事ネタや社会問題に鋭く切り込む河合薫さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

「寿命」ってなんだろう?

今回は、日経新聞に掲載されていたFINANCIAL TIMES(8日付け)の記事から「人間の寿命」について、あれこれ考えてみようと思います。

記事の見出しは“寿命を縮める災害ストレス”。サイエンス・コメンテーターのアンジャナ・アフジャ氏のコラムです。

内容は、近年世界中で頻発している災害ストレスが心身の与える影響に関する研究結果を綴ったもので、中でも興味深かったのが、米ワシントン大学の研究チームの調査結果です。

調査チームが、プエルトリコ沖のサンディアゴ島に生息するアカゲザルの血液サンプルを、2017年に襲った大型ハリケーン前後で比較したところ、サルの老化が加速したことがわかったというのです。

とりわけアルツハイマー病などの、「加齢に伴う病気の発症」と関連する免疫細胞が影響を受け、サル年齢で2年分、人間でいえば7~8年分老化が進んでいたとか。

これって・・・すごいことですよね。8年分も、脳の老化が進んでしまうなんて!

もちろんこれは「アカゲザル」を対象にした結果です。しかし、炎症と老化を研究する研究者は、「人間にも同様に悪影響を及ぼす可能性は極めて高い」と指摘。
アカゲザルも人間も・・・類人猿ですしね。

そもそも、ストレスが人間の老化を加速させる危険因子であることは、様々な調査からこれまでも確認されていました。

例えば、配偶者の死により死亡リスクが高まったり、認知機能が低下したり。ストレスを慢性的に感じていると体の免疫システムが弱まり、さまざまな感染への危険が高まったり、脳卒中などのリスクが高まります。

また、
・孤独感は血圧の上昇、ストレスホルモンの増加、免疫力の低下をもたらす
・孤独感はアルツハイマー病や睡眠障害につながる
・乳がん生存者のうち、孤独感の高い人はそうでない人に比べ再発リスクが高い
といった具体に、「孤独感=lonliness」を抱くことで、心身が蝕まれるのも、ストレスに起因しています。

他者と協働することで生き残ってきた「人間」にとって、共に過ごす他者の欠如は絶え間ない不安をもたらし、 大きなストレスになってしまうのです。

いずれにせよ、今回の調査結果、すなわち「ストレス」がアルツハイマー病の発症と関連する免疫細胞に影響を与えていたことは実に興味深い知見です。また、老化には個人差があることもわかったため、今後は「社会的な結びつき」との関連も調べる計画だそうです。

時事ネタや社会問題に鋭く切り込む河合薫さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 災害ストレスでも寿命が縮む。人間の老化を加速させる要因とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け