日々の生活を送る上で赤十字とはさして接点を感じない日本と異なり、その活動を日常的に目にするというフランス。そんな存在感の違いは、赤十字を巡る報道にも顕著に現れているようです。今回のメルマガ『パリ大学博士・世川祐多のフランスよもやま話』では歴史学者で日仏交流に情熱を注ぐ世川祐多さんが、フランスで流れているウクライナ赤十字に関するニュースを紹介。その上で彼らが戦場で抱えているであろうジレンマを推測するとともに、ニュースに接して抱いた率直な感想を吐露しています。
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フランスらしいロシア情報
今回のロシアの戦争に関して、日本ではさほど報じられないが、最もフランスらしいと感じる記事があった。
それは、赤十字を疑う記事だ。
日本人にとって、赤十字とは、衛生兵の腕章などにもなる、白に赤十字のマークを掲げる由緒ある世界的な慈善団体で、日本にも日赤があって、野戦病院や病院船などにもそのマークが掲げられ、とにかく赤十字のものを攻撃することは国際法上許されないというイメージに留まっているかもしれない。
なんとなくだが、日本の市民にとって赤十字というのは接点の薄いもののように思われる。
しかし、フランスにいると、赤十字の存在感は大きく、赤十字を身近に感じることも多い。Croix Rougeのジャケットを着た若い学生バイトのような人たちが、メトロの出口などにいて、人を呼び止めながら毎月の銀行口座引き落としの寄付金を募ることも多いし、ニュースでもしばしば目にする。赤十字がフランス語圏のスイス人によって作られたが故かもしれない。
そうして、今回はウクライナが赤十字を疑うというニュースがフランスで流れている。
ウクライナの国会議員で人権などを担当するLiudmyla Denissova氏が、ロシアへ強制収用されたであろう「難民」がどこにも見当たらず、ウクライナ赤十字に答申を求めているが満足のいく解答がないから、赤十字が全く役割を果たしていないと怒っているのである。
ただ、今回の戦争における人道回廊や救援物資運搬に関して、随分赤十字は難儀しているようだし、機能したくても機能できないジレンマに陥っているのだろうというのは、私の単なる憶測でしかない。
しかし、思えば、今回赤十字は赤十字に期待されるヒロイックな活躍ができていない。
そんなフランスらしい赤十字関連ニュースを見て、なんとも言えない気持ちになる。
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image by: Iryna Mylinska / Shutterstock.com