バイデンのリップサービス。日本の常任理事国入りが「ありえない」当然の理由

United Nations Building and the flags in Geneva SwitzerlandUnited Nations Building and the flags in Geneva Switzerland
 

先日の日米首脳会談でバイデン大統領が発言した、日本の安保理常任理事国入りの支持。永田町界隈ではこれに沸き立っているようですが、本当に実現可能なのでしょうか。今回のメルマガ『室伏謙一の「霞が関リークス」増刊号』では国会議員や地方議員の政策アドバイザーを務める室伏謙一さんが、国連や安保理とは何かというところからその可能性を探ります。

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日本の常任理事国入りはありうるのか

5月23日の日米首脳会談で、米国のバイデン大統領から、安保理改革が実現した場合は、日本の安保理常任理事国入りを支持するとの発言があったようです。このニュースを受けて、素晴らしい!と喜びの声が永田町辺りから聞こえてきていますが、さて、そんなことはありうるのでしょうか?

そもそも、国連とは、安保理とは、ということを考えていくと、結論から言えば、そんなことはありえないということが分かってくると思います。

まず、国連とは何かと言えば、国際連合と答えるのでは単なる同語反復です。国際連合とは、ご承知のとおり日本語だけの表現で、英語ではUnited Nations、フランス語ではNations Unies、そして中国語では聯合国、です。英仏中いずれも国連公用語です。

どこにも「国際」なんて出てきませんよね。中国語の表記が一番直接的かつ、日本人的には正確ですが、いわゆる国連とは、すなわち連合国ということです。連合国とは、そう、第二次世界大戦の戦勝国ということです。

つまり、日本で言ういわゆる国連は、第二次世界大戦後の、戦勝国による世界支配体制ということです。

安全保障理事会とは、国際の平和と安全を維持することをその責務として設けられた組織ですが、戦勝国による組織であることを考えれば、この責務、任務が一番重要であるということになります。実際、これまでも国連にとって最も重要と言っていい活動は全てここで決められてきました。

その常任理事国とは、当然のことながら、第二次世界大戦の戦勝国です。

具体的には、アメリカ、ロシア(国連憲章の表記上はソビエト連邦になっていますが、ロシアが国家承継をしているので特段問題はありません。)、中国(こちらも国連憲章の表記上は中華民国になっていますが、中華人民共和国がこの立場を承継しているので、特段問題はありません。)、イギリス、そしてフランスです。

まあフランスを「戦勝国」とするのは無理があるかもしれませんが、枢軸側と対峙して、勝った側にはいますし、少なくとも欧州の大国の一つであり、勢力均衡の一翼を成す国家ではありますし、国連設立当初は、まだまだ世界各地に植民地を有していましたから、影響力の大きい大国として常任理事国となっていると考えた方がいいでしょう。

あと、アメリカとしてはフランスが自分の意に反した行動しないようにタガをはめておきたいという考えもあったと思います。

さて、日本がこの安保理の常任理事国に入るということは、戦勝国体制に入るということであり、戦後は支配する立場というより支配される立場にあったわけですから、その時点でまずありえませんね。

米国は安保理改革なるものを前提にして、それが成就したあかつきにはとしていますが、安保理改革とはそもそも何かと言えば、常任理事国を増やすとか、どこを入れるとそんなレベルの低い話ではありません。この戦勝国体制、戦後の世界支配体制を変えようという話です。

したがって、そう容易くできる話ではありませんし、世界大戦の結果生まれた体制ですから、それを変えるということは、大きな戦争を経る可能性すら考えなければいけません

(『室伏謙一の「霞が関リークス」増刊号』2022年5月26日号より一部抜粋)

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昭和47年静岡県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科修了(法学修士)。総務省、株式会社三井物産戦略研究所、デロイトトーマツコンサルティング合同会社、みんなの党代表(当時)渡辺喜美衆議院議員政策担当秘書、外資系コンサルティング会社等を経て、室伏政策研究室代表 政策コンサルタントとして独立。政・財・官の全てを経験した立場から、国会議員、地方議員の政策アドバイザーや民間企業向けの政策の企画・立案の支援、講演活動(自民党議連「日本の未来を考える勉強会」、三橋経済塾、政経懇話会等)、東京MX「モーニングCROSS」、インターネットテレビ「チャンネル桜」他、報道・情報番組において政治・政策関連のメディア活動にも従事。

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