まず、日本が電力不足に陥った際に、最終的にはドイツがフランスから供給を受けるように、中国に電力を依存するという可能性があります。間に海があるので難しいですが、送電技術が進めば可能性は出てくると思います。
また、日本がそれこそ山本太郎氏が一時期主張していたように、いつまでも「原発が嫌だから石炭」などといった時代錯誤を続けるようですと、環境後進国だとして中国から批判を受ける危険もあります。それどころか、経済制裁などの口実にされかねません。
最大の問題は、仮に日本の原発稼働がダメであっても使用済み燃料の冷却や、保管は続くわけです。これを安全に進める資金や、技術者が不足した場合には、中国に救済を乞うという屈辱的な局面もあり得ると思います。
3番目は、EV(電気自動車)です。EVの基本的な技術はシンプルですから、構造のモジュール化、標準化というのが最終的には世界を席巻する可能性があります。その場合に、モジュールの設計と製造については中国が大きなシェアを獲得することで、日本の自動車産業が「ほぼ終了」になる危険性があります。こちらについては、改めて時間をかけて調べてゆきたいと思っています。
4番目は宇宙開発です。中国は有人宇宙旅行など宇宙開発にも「前のめり」になっています。ですが、集団と個人の関係、想定外の事態における行動様式などを考えると、中国の文明というのは、有人宇宙開発とは「相性が悪い」という心配があります。
ですから、イザという場合には、それこそ日米が連携してレスキューミッションを行うという事態も想定しておいた方がいいと思うのです。そのためには、プロジェクトの透明性が必要ですが、面子などにこだわるとその辺がうまく行かない心配があります。
バラバラに4点ほど指摘しましたが、他にもあると思います。パンデミックの中で、人の交流がストップしています。そんな中で、急成長を続ける中国の科学技術に関しては、テレワークで開発速度を保ちつつの2年という時間を経て、大きく様変わりをしていると考えられます。
そのような事態に対峙し、同時に共存していくというのは、実は大変な努力を要する作業です。そのことを考えると、IPEFという発想の古さと底の浅さというのは非常に気になるのです。
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