論点ズレまくり「IPEF」では足りぬ。中国との共存戦略“4つの大問題”

 

また、中国の技術がいかに先進的だといっても、当面スマホのOSとしては、アップルとアンドロイドが採用されており、これが透明性の確保に役立っています。その一方で、中国では金盾(国家によるネットの万里の長城)に囲い込まれた中で、ファーウェイの独自OS「ハーモニー」の普及が進んでいます。

仮にこれからパンデミックが明けて、ポストコロナの時代となれば、改めて巨大な人数の中国人が観光やビジネスで世界に出てくることになるわけです。その場合に、この間に進んだ「ハーモニーOS」搭載機がどんどん国外で使用されることになります。中国の人々は、スマホを使ったキャッシュレスなどには、日本や欧米以上に使い倒しているわけで、当然それを海外旅行先でも使うからです。

その場合に、ハーモニーOS搭載機には、スパイ機能があるなどという風説がIPEF参加国の間で広まってしまうと、インバウンド観光産業には大きな問題になってしまいます。勿論、個々の中国人は海外旅行を楽しみたいか、あるいは商談をまとめたいので国外に来ているわけで、何もスパイをしようとは思っていないわけです。ですが、これに対して風評だけで「ハーモニー禁止」などの措置が取られると、本当に個人レベルで関係がギクシャクすると思います。

ハーモニーOSと搭載機に関して、敵視するのではなく、透明性を要求して根拠のある信頼を形成できるか、これは結構な難題だと思います。

2点目は、原子力開発です。この間の中国の原発開発については、あまりに性急かつ大規模であり、どこかで破綻が起きることへの懸念が払拭できませんでした。非常に具体的な話になりますが、中国は東シナ海を挟んだ日本の西にあります。ですから、中国の原発で事故が発生し、高線量の粒子が大量に大気中に放出された場合には、日本にも大きな影響が出るわけです。

従って、どんなに日本が反原発世論に屈して行っても、最高レベルの技術者集団を維持して行って、「イザという時」には中国の原発の故障や事故に際しては「助けに行く」という体制が必要だと思っていたのです。

ですが、状況はどうやら違うようです。中国は猛烈な勢いで、元は東芝ウェイスティングハウスが開発した第3世代のAP1000などの炉を大型化して建設していますが、同時に猛烈な勢いで人材も育てているからです。この勢いで、中国における原発開発が成功してゆき、日本の原子力産業が反原発世論に屈していくようですと、次のような危険性があります。

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