論点ズレまくり「IPEF」では足りぬ。中国との共存戦略“4つの大問題”

 

3点目は環境問題です。「パリ協定の目標及び我々の国民と労働者の生活を支援する取組に沿って、我々は、経済を脱炭素化し、気候の影響に対する強靱性を構築するために、クリーンエネルギー技術の開発と展開を加速することを計画する。これには、技術協力の深化、譲与的融資を含む資金の動員、そして持続可能で耐久性のあるインフラの開発支援と技術協力の提供による競争力の向上と連結性の強化のための方法の模索が含まれる」。

これはまあ、分かりやすいと言えば分かりやすいわけで、アメリカ民主党の左派に「ソンタク」した結果、こんな格好で入った項目と思われます。

4点目は、「税、反腐敗」というスローガンです。「我々は、インド太平洋地域における租税回避及び腐敗を抑制するために、既存の多国間の義務、基準、及び協定に沿った、効果的で強固な税制、マネーローンダリング防止、及び贈収賄防止制度を制定し、施行することにより、公正な経済を促進することにコミットする。これには、説明可能かつ透明性のある制度を促進するための知見の共有や能力構築支援等を模索することが含まれる」

これは、中国を意識しているというよりも、アメリカの特に国務省や財務省としては、「インド太平洋地域」におけるマネーロンダリングや、ギャングの暗躍、アングラマネーの流通といった問題に怒っているということのようです。

こうやって4つの「柱」を見て行きますと、どうにも論点がズレているように思います。多くの識者が指摘しているように、TPPと比較すると、自由貿易とりわけ関税に関する政策から逃げているというのは、大きな問題ですが、それだけではありません。

当面の問題だけでも、中国と関わっていく中で様々な点について、国際社会として、あるいは日本として警戒し、協議して行かなくてはならない問題が多くあるからです。今回は4点指摘しておきたいと思います。

1つはコンピュータやスマホの問題です。アメリカでは、5Gインフラなどを中心に、最先端技術を搭載した中国製品への「恐怖症」が蔓延しています。要するに基地局のハードウェアなどに、秘密裏に情報を収集し、転送する機能を潜ませており、そうした機器を使用すると情報が中国に「筒抜け」になるというのです。

実際は、そうした懸念というのは極めて限定的です。5G(第五世代移動体通信)というのは、各国が参加したコンソーシアムによって厳密に規格が定まっており、そこに怪しい機能を潜ませることは難しいというのが一点指摘できます。また、チップやディスク等に、あるいは基板や結線にハード的に「忍者的な機能」を埋め込んだ場合には、非破壊検査で究明が可能です。また、異常な周波数帯の電波の発生も検知可能であり、物理的な現象として見えないことはないからです。

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