さまざまな理由で一般の流通ルートに乗らない、利用価値の乏しい魚の存在をご存じでしょうか。そんな「未利用魚」の意外な活用法を取り上げているのは、世界初のパクチー料理専門店の運営などで注目を集め、今年1月1日には千葉県鋸南町に「パクチー銀行」を設立した株式会社 旅と平和の代表取締役社長・佐谷恭さん。佐谷さんは今回のメルマガ『佐谷恭の「パクチー起業論」』で、知人が考案し製造販売する完全無添加ペットフードの「実力」を紹介しています。
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未利用魚
日本の漁業において、獲れたけど市場に回らない魚はかなりの量になるという。そういう魚は一部は養殖に、でも大部分は行き場がなくて捨てることが多いらしい。
2020年11月に三重県の須賀利漁港を訪れた際、漁業を体験しながらこの話を聞いた。居酒屋から漁業に参入したゲイトという会社の五月女さんが、居酒屋の仕入れや資源の未来を憂慮して、根気づよく挑戦した結果、須賀利で漁業権を獲得した。
「売れる魚」とは、僕らの誰もが聞いたことのあるメジャーな魚である。一匹ずつ値段がつく。一方で、小魚やマイナーで市場に出回らない魚は、まとめて10円とか、引き取ってくれればいい方だとか、そんな感じだそうだ。
漁業権をもらうのはとても難しい。よそ者を入れているところは極めて少ない。その理由の一つが、自分たちの権利(利益)を、新規参入した者(会社含む)が持って行ってしまう危惧があるからだ。
ゲイトはその心配を解消するため、「売れる魚」はすべて漁協に納めている。そして、売れない魚、つまり「未利用魚」を居酒屋で使えるように加工する。そのための加工場もつくってある。
10店舗ほどあった店舗を、コロナウイルス騒動の苦境で一気に1店舗にまで減らした。そんなタイミングで僕は五月女さんに会った。そして、先月久しぶりに会ったらすでに店舗は無くしていた。
居酒屋と漁業が象徴的だが、彼は無数の事業をしている。僕が2泊3日間須賀利にいたときも、次々と想像もしないジャンルの人と打ち合わせをしていた。少なくとも週に10件ぐらいはアイデアを誰かに提案して推進させる。
最新ネタは、未利用魚でつくったペットフードだった。水揚げされてから1時間以内に高圧をかけて加工する。鮮度抜群。犬や猫は、その商品と1時間以上経ってから加工したものを、100%の確率で判別する(後者を食べない)そうだ。人間はほとんど判別できないらしい。
完全無添加のペットフードの話を聞いて、「面白いですねー」とつぶやいたら、数日後に150袋ほど送られてきた。ゲイト社と協議の上、とりあえず商品を知ってもらうために配ろうということになったので、ペットを飼っている人を見つけては配ってみた。
まだ7~8人に配ったのみだが、反応がすこぶる良い。これまで与えていたどんなエサよりも食いつきがいいとのこと。あまりに食いつきが良すぎていままでのエサを食べてくれなくなるのではと思い恐ろしくなったと複数の人から言われたぐらい。
今後どのような展開になるかは分からないが、配布や販売に協力してみることにした。パクチー銀行の店頭でひっそり販売(or配布)していく。
と思ったら行動の早い五月女さん。パクチー銀行専用の通販サイトまで作ってくれた。パクチー銀行と言う名の、無添加ペットフード専門店がオンライン上にではあるが、できてしまった(笑)。
ペットを飼っている方は、ぜひお試しください。
● パクチー銀行
※ 鋸南に来ていただければ差し上げます
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image by: Shutterstock.com