解説
ウクライナを永世中立国に?というと突飛もない事と思われるかもしれませんが、前例があります。
それはベルギーです。1831年と1839年に締結されたベルギーの独立と永世中立を保証する条約です。それが機能したのです。
ベルギーは北海に面し、ドイツ、フランス、オランダに挟まれた地理的条件から、ローマ時代から1,000回以上の戦いが繰り返されてきた。1830年、ベルギー人がオランダに反抗すると、オーストリア、プロイセン、イギリス、フランス、ロシアの欧州連合は、ベルギー独立のための交渉を開始した。
最終的には、ベルギーをオランダから分離し、独立した永世中立国であり、他のすべての国に対してその中立を守る義務を負う、という広範な条約に合意した。この条約の条項は、署名した5つの大国の保証の下に置かれたものであった。ベルギーは、中立と安全保障を交換し、75年間の平和を手に入れたのである。
解説
そもそも今回の戦争もウクライナが核放棄の代わりに安全保障をもとめたブタベスト合意をロシアが破棄し、それに対して米国や英国が断固とした姿勢をとらなかったことから発しています。ですから、イスタンブール案が具現化して条約締結しても、廃棄される可能性はあります。
ベルギーの永世中立の立場も1914年にドイツの条約破棄により終止符を打ちました。しかしながら、すくなくとも75年間の平和は得られたのです。
ウクライナはベルギーと同様、その地理的条件から、今や欧州大陸全体の平和と安定の中心であるとみなされています。また、ベルギー条約と同様に、イスタンブール案は被保証国(ウクライナ)と保証国(ロシア+米国、NATO)の双方に利益をもたします。
エスカレートするのか停戦合意に至るのか?
ニューヨークタイムズ紙によれば、ウクライナは米国製ジャベリン対戦車ミサイル、チェコの大砲、トルコのバイラクター無人機など、NATOと相互運用可能な兵器を受け取っています。そしてバイデン大統領は400億ドルの軍事支援策に署名したばかりです。
また米国はロシアの将官を殺すのに使われた情報を提供しているそうです。ロシアの黒海ミサイル巡洋艦モスクワを撃沈したときの情報提供もです。
米国、NATO諸国はロシアと直接対決するつもりはない、と明言していますが、上記のような支援を行う中で、代理戦争と直接戦争の境目はあいまいになってきています。
ヘンリー・キッシンジャー元米国国務長官は先週、「簡単に乗り越えられないような動揺と緊張を引き起こす前に、今後2ヶ月のうちに交渉を始める必要がある」と警告しています。
その交渉のたたき台として今、考えられる唯一のものはイスタンブール合意案(コミュニケ)だというのが、「フォーリンアフェアーズ」の主張なのです。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』6月5日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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